地に墜ちた神3
「よくここが解ったよね~シズちゃんに、紀田正臣くん?」
怒りで青筋を立てているシズちゃんと、俺を射殺さぬとばかりに睨み付けてくる紀田正臣。
本当に苛々して、反吐が出る。
俺の結界にヒビが生じたのはほんの一瞬。あの雨の日だけ。
(その一瞬を見逃さなかったって何?獣じみてるよね。あぁ、むかつく)
「帝人はどこだ・・・・!」
「俺が教えると思う?思ってたら馬鹿馬鹿しくて鼻で嗤うよ」
「・・・静雄さん、ここ任していいっすか?俺、帝人を探してきます・・・。きっとこの森のどこかにいるはずです」
俺とシズちゃんがにらみ合っていると、紀田が化け物にひそひそ声でつぶやいている。
(ざんねーん!俺、読唇術がつかるんだよね。バレバレだってーの)
俺は小ずるかしく回る紀田に向けて小口を投げる。シズちゃんがその刃物の切っ先を素手で受け止めた。
(ほんっと化け物だよね・・・!)
俺は舌打ちをして、すぐに投げつけられるであろう奪われた小口をよけるために跳躍した。
案の定、シズちゃんはそれを力の限りに投げつけて、さっきまで俺のいたところは無残に地割れを起こした。
すと、と音もなく俺は地上に舞い落ちる。
「いけ、紀田。あいつは俺に任しておけ・・・!」
紀田は化け物の声にうなずくと、背を翻して森の中へと消えていった。
シズちゃんはぎらぎらと俺を睨み付けながら、その背で紀田を守っている。あぁ、反吐が出る正義感。
むかつくことこの上ない。
「お前一人でこの俺を止められるとか本気で思ってるの?」
「てめぇはここで殺す。俺が殺して、帝人を連れて帰る・・・!」
「はっ!死ぬのはお前だよ」
俺の得意とするのは結界術。化け物の得意は剛力。相反し、交わることのない力。まさに『矛盾』そのもの。
粉塵が舞い上がる。それが合図だった。
シズちゃんが自慢の脚力で一気に俺との間合いを詰めてきた。
俺は手を振り上げて、結界を己中心にして広げていく。結界はただ守るだけではない。その結界に触れた物をはじき、肉を焼き払うことだってできる。
俺の結界に飛び込んできたシズちゃんは拳で結界を破ろうとした。その力と力のぶつかり合いに、俺は足を踏ん張ってみたけど、はやり力押しでは化け物の方が有利らしい。じりじりと後ろに押されていく。
(規格外ってほんっとむかつくよ・・・・!)
「てめぇを殺して絶対に帝人を助けだすっ」
「正義感ぶってんなよ!反吐が出るっ」