NAMELESS OPERA
翌朝、アレンたちはローラの門の前に立った。
警備のサマルトリア兵は、二人の姿を認めると、さっと両頬を緊張させたが、何の応えもせずに二人を通した。
避難民の列とは並んで逆行しながら、二人の間には一言の会話も無かった。
海底の通路は呆気ないほど短く感じられ、矢のように強い光が斜めに差し込む階段に来ると、行程はもう終わりだった。
空の色さえが違って見える。
海峡を挟んで植物相が変わり、遠く行く手に広がるのは、故国には無い照葉樹林だった。
この異国の地に初めての一歩を踏み出すとき、アレンは足の下で大地が震えたような気がした。
広大な平原を隅々まで吹き清めるように押し寄せ、髪を舞い上げる風に、カインは顔を上げて虚空を凝視した。
赤い嘴をした小鳥が一羽、鋭い叫びを挙げて地面から高く飛び立った。
鳥が真っ直ぐ飛び去った方向、その目にすることもできない遥か彼方に、ロンダルキアが存在するのだった。
To be continued……
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