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リヲ(スランプ中)
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novelistID. 4543
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犠牲になった分も・・・

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子供の泣き声にハレルヤは目を覚ました。

覚ましたというのは過言かもしれない。
なぜなら彼の本能は(彼自身とも言える彼の脳量子波は)ここが現実ではないと告げている。
例えるのならば・・・そう。

誰かの、夢。



見慣れない何処かの研究所の一部屋。
嗅ぎなれた薬品の匂いが鼻をつく、そんな部屋で泣きじゃくる幼子。
簡単に壊れてしまいそうなその身体には数々のコードが繋げられている。
そして周りにこぼれ落ちている薬の山・・・。

この夢が示すハレルヤに理解できること。
この少年は今も誰かに実験体として嬲られ続けているという事実。

(なんでだ・・・機関はもう存続してないはずなのに・・・)
この手の実験をしていた超人機関は既に半身でもあるアレルヤと共に壊滅させたはずなのに。
多くの兄弟の命と引き換えにこれからも続く悲劇を断ち切ったはずだったのに・・・。

「・・・おい、そこのガキ」
何もできないのは理解しているつもりだが、それでもなぜか放っては置けずにハレルヤは声をかける。
「っ!?」
少年はビクつき、ハレルヤを見上げる。
その少年の目は恐怖ではなく、ただ驚いているだけ。
「・・・・・・俺以外にも、脳量子波が使える奴がいたのか・・・?」
外見に反して口調はどこか大人びている。
ああ・・・こいつは大人なんだなとハレルヤは理解する。
「なぁ・・・どうしてこんな目にあわないといけないんだ・・・っ」
次々と溢れる涙を拭いながら少年は声を振り絞る。

ハレルヤの脳量子波は理解する。
この少年は急に変わってしまった世界と人間に困惑して・・・そして怯えている。

「そうか・・・お前、イノベイターなんだな・・・。それも高レベルの」
「イノベイター・・・。研究員たちも言っていた・・・。
でも俺はそんなのじゃない、ただの・・・人間だ・・・!」
「諦めろ。
覚醒しちまった以上はお前はもう元の鈍感な人間には戻れねぇよ」
「・・・・・・っ」
また、少年の目から涙が洪水のように溢れてくる。
それでもハレルヤは冷徹な言葉を浴びせる。
「清濁合わせて受け入れろ。そして生きろ、それが俺に言える言葉だ」

少年も心のどこかでは理解している。
世界は、人間はとても弱くて臆病だから・・・。
自分達よりも強い生き物に憧れ、時には刃を向ける。
だからこそ人間は他の生き物を調べ管理して自分達が優位に立ったつもりなのだと夢想する。
そして利用しようとするし助けようともする矛盾した生き物だということを。

「俺はそれでも・・・犠牲になんか・・・なりたくないよ・・・・・・っ」

犠牲。
それにハレルヤの裡のアレルヤが無意識に反応する。
彼はとても優しいから・・・この少年と出会ったらきっと助けに行くだろう。
そして助けたい気持ちはハレルヤにもある。

けれども其れは無理な事だとハレルヤも、勿論この少年も理解している。

「・・・自分が支えてやってるんだとでも思えよ。
馬鹿な人間のために、これから増えるお仲間のためにも・・・」
「・・・・・・・・・自分が、支えてる・・・」
「そんで傲慢なまでに自分を守りぬけよ。
ただの犬死だなんて嫌だろ・・・?」

この言葉がどのような影響を及ぼすのかはまだ分からない。
それでも、ただの犬死だけはさせたくなかった。
身体だけでなく心も死んでいった兄弟たちのようには・・・。

「・・・その酷ぇ吐き気と頭痛を引き起こす薬だってな、
犠牲になったヤツラのお陰で死ぬことはなくなったんだ」
少年が嫌悪する薬も、元は超人機関で作られた脳量子波の反応を調べるための薬。
その量を計るのことさえも彼の兄弟たちが犠牲になったものだ。
「・・・生きろよ。
犠牲になったヤツラの分だけでも・・・」

そうだろ・・・アレルヤ?

「・・・・・・なら、もう少しだけ頑張ってみますよ。
・・・ガンダムマイスターのハレルヤ」
「ああ、生きろよ。
イノベイターのデカルト」

少年の目から流れる涙は止まらない。
止める術をハレルヤは知らない。
それでも少年は口元に笑みを浮かべる。
それは生きる覚悟を決めた者の顔だ。


「・・・俺も、貴方たちの仲間になりたかった・・・・・・」