Beast
その時元親は、家康にそれほどの衝撃を与えるつもりも、ましてや傷つけるつもりもなかった。
二人して繁華街を歩きながら他愛もない話をしていた最中のことだ。高校に入ってからぐっと背が伸びた家康が、「じきに元親を抜かすかもな」などと言って何の憂いもなさそうに笑うものだから、油断したのかもしれない。話が途切れた一瞬の間に、元親は意図せずそれを口にしていた。
「そういや、石田三成とダチになったぜ」
告げた途端に、隣を歩いていたはずの家康がぴたりと歩みを止めた。
勢い余って数歩分先へ行ってしまった元親は、どうしたのかと振り返る。
そして振り返った先にあったのは、いつもは明るい光で耀く眼を見開いて、愕然とした面持ちで立ち尽くす家康の姿だった。その硬く強張った顔には、確かに傷ついた色すら覗いていた。
だが同時にその顔は、自分でもどこを刺されたのかわからないとでもいうような、戸惑いをも色濃く映し出していたのだ。
その反応に自分も固まった元親は、心のどこかでひどく納得した。
こうしてみると、彼らは映し鏡のようだった。
二人して繁華街を歩きながら他愛もない話をしていた最中のことだ。高校に入ってからぐっと背が伸びた家康が、「じきに元親を抜かすかもな」などと言って何の憂いもなさそうに笑うものだから、油断したのかもしれない。話が途切れた一瞬の間に、元親は意図せずそれを口にしていた。
「そういや、石田三成とダチになったぜ」
告げた途端に、隣を歩いていたはずの家康がぴたりと歩みを止めた。
勢い余って数歩分先へ行ってしまった元親は、どうしたのかと振り返る。
そして振り返った先にあったのは、いつもは明るい光で耀く眼を見開いて、愕然とした面持ちで立ち尽くす家康の姿だった。その硬く強張った顔には、確かに傷ついた色すら覗いていた。
だが同時にその顔は、自分でもどこを刺されたのかわからないとでもいうような、戸惑いをも色濃く映し出していたのだ。
その反応に自分も固まった元親は、心のどこかでひどく納得した。
こうしてみると、彼らは映し鏡のようだった。