Beast
結局その後も元親と三成の偶然から始まった交友は続いたが、家康も含めて三人で会うことはなかった。元親は何度か家康に提案したのだが、三成は勿論家康も拒否した。だがそれは三成を避けたというよりは、自分を目の前にした時の三成を元親に晒すことを避けるためだった。
元親が家康の話をするたびに見せる激昂など、家康と対峙した時の反応に比べればぬるいものだ。
元親が情に篤い男だということはわかっているが、万が一にもそれを見せることによって、元親が三成を遠ざけることを家康は危惧したのだ。それが家康の示しうる唯一の、一方的な、友情に似た何かだった。
停滞する激情をあやしながら、つかず離れずを繰り返す。
きっとこのまま、この奇妙な因縁の相手を遠目に捉えながらも別々の道を往くのだろうと、すでに家康は受け入れていた。
それが覆されるのには、あと数年を待たねばならなかった。