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【DRRR】月夜の晩にⅠ【パラレル臨帝】

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[…本当にいいんだな?]
「早くしなよ。俺だってそんなに気が長くないんだからさ」

セルティがゆっくりとヘルメットに手をかけ、それを外して見せた。
そのモーションの1つ1つを目で追っていた帝人が、そこから現れた姿に目を見張る。
現れた姿、というか、そこには何も現れなかった、というのが正しいのだが。本来人面があるはずの場所はぽっかりと空洞を空け、もやもやとした影のようなモノが揺らめいているだけだった。
拒絶されることに怯えるセルティが、肩を竦めながら帝人を見た。
見た、ような方向に体が向いている、と言う状況なのだが。

「……臨也さん。……これって、どういう意味ですか?」

少しばかり理解がついていかず、帝人は怯えることもなければ特別興奮してもいない様子で臨也に説明を求めた。しかしその目だけが隠し切れないあの興味津々な視線を浮かべ、詮索するようにその何もない空間を見つめている。

「彼女はこの地球上でも稀な存在さ。デュラハンと言ってね」

臨也が簡単に説明するうちに、帝人は目をキラキラと輝かせてその姿を食い入るように見入った。恐らく彼が今まで勉強してきた、地球上の生き物の知識には絶対に入っていないだろうレアな存在だ。彼はハンターのような眼差しで少しでも多くの情報を月に持って帰ろうとしているようだった。
その態度に、むしろセルティの方が引いているらしい。
純粋な興味を注がれて、恥ずかしそうに横を向いたり、新羅に助けを求めたりしている。

「はあ。セルティさんは凄いんですねー」

光を反射することのない影を様々な形に操って見せ、帝人に尊敬の眼差しを向けられた彼女は、照れくさそうに肩を竦める。そして、手早くPDAに文字を打ち込むと今度はそれを臨也に向けた。

[で、私のことはそのぐらいにして、帝人君のことを教えろ]

自分には命令口調か、臨也はわずかにうんざりとしながら横に座る子供を見る。子供とは言いつつも、彼の言葉を信じるともう成人前の青年だそうだが。
臨也は自分の方を見ず、ずっとセルティに夢中になっているその姿に急に苛立って、前フリなくそのフードを引き掴んだ。その気配に帝人がビクリと背筋を伸ばした瞬間に、フードを思いきりよく引き下げる。
急な衝撃に驚いて、耳は警戒でピンと立ち上がって姿を現す。
ピョインと突き出た真っ白な毛に覆われた長いモノに、今度は新羅とセルティが目を見張る番だった。

「さー、帝人くん。ちゃーんと自分のこと、説明してよね?」

そう言って茶目っ気たっぷりに帝人へとウインクを送れば、少しばかり拗ねたような視線を送り返された。臨也の苛立ちはそれだけで心の奥が満足したように落ち着いていった。
帝人も臨也が満足したことを察して、ほんの少しうんざりしたような顔をしてから、2人の方へと向き直る。警戒に起きていた耳が、気恥ずかしさにそっぽを向き、少しだけ後ろに垂れた。

「ぼ、僕は月ウサギと言いまして……」

自分のことを一生懸命に話す姿を横目に見つめながら、臨也はようやく自分の心の奥にあったもやもやの正体に気付いていた。
彼の情報を知っているのは、この瞬間まで自分だけだった。この地球上でたった1人。
完全に独占していたのに、この瞬間から彼の存在の秘密というものは共有されてしまった。そうするように促したのは自分であったはずなのに、面白くない。というか、すごく……。

「それで、…。…あの……臨也さん、そんなに睨まないで下さい…」
「……睨んでない」
「子供っぽいよ臨也。っていうか、君みたいな慇懃無礼な人間が、帝人くんには随分と独占欲丸出しなんだね。見てて不思議に思うよ」
「それ、新羅には言われたくないんだけど」

あらかた自分の知っている情報と大差ない、しかもごく一部でしかないことを話し終えた帝人が、臨也を振り向いて苦笑する。
きっとここで、臨也の知らない情報を話したりされたら、完全に怒りに変わっていたことだろう。恐らくそれは帝人もわかっていることであり、だからこそこうして一部だけ掻い摘んで話したのだ。
セルティが再びPDAを向けてくる。

[なら、帝人くんはかぐや姫みたいに成長はしないのか?」
「…成長?」
「そういえばそうだね。かぐや姫は、大人の女性にまで成長したからこそ求婚を受けていたのだから」

帝人ははたと目を大きくした。

「あ、えと。そうですね……」
「何?何かあるわけ?」

少し言い淀んだ帝人を、臨也が覗き込む。
臨也としてはいつまでもこの腕の中にすっぽり収まるサイズで居てくれる方がいいのだが、確かに姿かたちが変わるというならそれはそれで見てみたい。

「…えーと、彼女が何故そういう事態になったのか、よく解明されていないんです。ほぼ全ての月ウサギは、今の状態のままですから」
「あ、変わんないんだ」
「変わりませんよ。僕らがニンゲンのように大きくなるという方が考えられません」

帝人は顔の前でその小さな手を振った。