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【DRRR】月夜の晩にⅠ【パラレル臨帝】

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「臨也さん、ニンゲンって、沢山いるんですね」
「うん?そうだよ。この地球上には69億人がいるんだ。1分間に約152人の人間が生まれいる、そう思うと、ここにいるのなんて、ほんの一握りにも満たないんだよ」

彼らが見たのは、渋谷の交差点が見渡せるカフェの窓際の席だった。
小さな子供がいてもおかしくはない、まだ7時頃の時間だったが、臨也が連れているのがおかしいのか、店員も客も気になるようチラチラと視線を送ってくる。しかし、けしてこちらを直視しようとはしてこなかった。どうやら日本人の性質上、お係わり合いにはなりたくないらしい。
帽子の上からフードを深く被った帝人は、その短髪の似合う愛らしい顔を臨也にだけ向けながら、下に見える街を指差した。

「これでも、ちょっとなんですか」
「そう。まるで寄生虫みたいだろう?気持ち悪いぐらいあっという間に性交して、増殖して、あんな風に地面が見えなくなるまで蔓延っているんだよ。人間なんてそんなものさ。だから面白いところもあるんだけどね」

子供に言う言葉ではないようなことが含まれていることにギョッとした隣の客が、そそくさと席を立つ。盗み聞きなんかしてるからだよ、と臨也は薄く笑った。
帝人は細くて短い眉の下の、その圧倒的なほど強く多くを語る真っ青の瞳をさらに見開いて人間を見た。
彼の興味は人間だ。
自分が愛し、興味を持つのも人間だ。
この奇妙な共通点は、俺にさらに彼の思考の深淵までも覗きたいと思わせる。

「じゃあ臨也さん」
「ん?」

帝人は振り返って、妙に大人びた表情を浮かべながら遠い目を臨也に向けた。まるで臨也ではなく、それよりももっと向こうを見ているように。

「ニンゲンは、何を目的にそんなに増えて、こんな風に生きているんですか?」

ごみごみと、窮屈そうに、人と人の間でぶつかりながら忙しなく生きている小さな生き物が、眼前の交差点を右往左往していた。
何のために生き、増えているのか。
各それぞれには何らかの理由があるのかもしれないが、種族として何か、と問われれば何もない。生物が進化して増殖するのはただ、持ち合わせた生存本能というものが訴えかけるからに過ぎない。またそれを尋ねられて納得できる答えが出来る者など、この日本には数えるほどしかいなさそうだ。

「僕ら月ウサギは、月を管理して、自分たちと、月にいる生物が幸福に生きてゆけることを考えて、そのために子を産みます。なので、一定数以上は増えないように管理運営され、成長すればそれぞれに用意された役割が決まるようになっています」
「随分と味気のない世界だね」
「僕もそう思います。だから僕はこの世界に憧れを抱いていたのかもしれない。でも、それにしたってニンゲンのことは理解できません。僕はここにいる生き物がみんな」

帝人はほんの少し寂しい表情をしながら、ぽつりと落とすように呟いた。

「ここに集まっているニンゲンがみんな、自分達で死ぬために生きているとしか思えない」

死ぬために生きている。
確かにそうだ。臨也はその考え方に賛同した。と、同時に酷く衝撃を覚えた。
目の前にいるのは、せいぜい4歳児にしか見えない子供で、今は見えないがその頭からはウサギ耳が飛び出しているとんでも生物だ。
それが、ニンゲンの生存本能がむしろ死を呼んでいると言ってみせる。

「このセカイに来てから見たニンゲンは皆、死んだような目ばかりです」

死んだような目、とは全くの無縁とばかりに、双碧の瞳はそれ自体が光を吸収し輝きを増しながら、ゆったりと臨也の瞳を見つめていた。

「……臨也さん、貴方も」