希望と光のSS4つ
ひらりひらり。そういう効果音があいつにはとても相応しい。あいつはとにかくかわす。あっさりとかわす。とくに俺がヒカリちゃんの話を出したとき。真面目にライバル宣言をしてみてもひらりとかわされた。怒ってみてもにっこり笑ってひらりとかわされた。むかつくとか通り越してもう理解できない。
「テメーだってヒカリちゃんが好きなんじゃないのかよ!」
ついかっとなってそんなふうに詰め寄ってしまったことがあった。タケルは答えなかった。その代わりこんなことを言った。
「そんなに慌てなくたって大輔くんならチャンスあるよ」
俺にはやっぱりその言葉はわからなかったし、いつものような愛想笑いもカンに障るだけだった。
「なんだよそれ。お前のほうがヒカリちゃんと仲良いじゃねーか」
「でも大輔くんは太一さんに似てるとこあるから」
タケルは俺のゴーグルを軽くつついた。
「僕なんかより君のほうがずっと、脈ありだと思うんだ」
そう言ったあいつの笑顔がいつもとちょっと違う気がしたけれど、それもほんの一瞬の間だった。
「だからって簡単に引き下がる気はないけどね」
意味ありげな笑顔を残してタケルは俺に背を向けた。…………。…………。
あ、もしかして今のって俺への宣戦布告…!?
「お、俺だって! 負けねーからなっ!」
反射的に出てきた大声にタケルは振り向いて、ひらりと手を振った。
……なんでそこで楽しそうな顔をするのかわかんねー…。