二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

Trick or Treat?

INDEX|1ページ/2ページ|

次のページ
 
「久しぶり、兄さん」
「幽! 久しぶりだな。どうした?」
静雄が帰宅して玄関のドアを開けようとした時、タイミング良く現れたのは弟の幽だった。人気アイドルの幽は現在は長期間に渡って映画の撮影で忙しいらしく、こうして顔を合わすのは二ヶ月ぶりになる。
久しぶりに会えた弟の元気そうな様子に安心して、静雄は滅多に見せない笑顔を浮かべた。それに対して表情ひとつ変えずに(無論、静雄には嬉しそうに見えた)、幽は手にした真っ白な箱を兄へ差し出す。
「これを、兄さんに渡したくて」
「ん? なんだ?」
ずい、と手渡されたその箱は、小さいながらもずしりと重みがあった。箱の雰囲気からケーキか何かが入っているのだろうと察しはついたが、それにしては重い気がする。
「かぼちゃのプリン……今日、ハロウィンだから」
「ああ! それでわざわざ来てくれたのか?」
「うん。それ、美味しかったから……是非、兄さんにもと思って」
「そうか。ありがとな、幽……。そういや、今日はなんかいろんな奴から色々貰ったな」
弟からの思わぬプレゼントに感激しながら、静雄は上機嫌で今日もらった数々のお菓子のことを弟に話した。
一番初めは、出勤途中に会った門田だった。
狩沢や遊馬崎のイタズラ対策のついでに買ったと言われて、可愛らしい袋に詰め込まれた色とりどりのチョコレートやクッキーをもらった。
二番目はトムで、休憩に入るごとにコンビニで売っているハロウィン仕様のお菓子やデザートを買ってきてくれた。
その次はサイモンで、帰りに露西亜寿司の前を通った時に、店で出されているフォーチュンクッキーを手渡された。
「ほんと、みんな色々くれるよな……おれ、いっつも忘れちまってて何も用意出来ねえっつーか、まあ金もねえんだけどさ。ハロウィンてすげえイベントだよな」
にこにこと嬉しそうに笑う静雄に、幽は微妙な表情を浮かべた。静雄の言う「みんな」が本当に他意なくお菓子をくれているのかは怪しいところだが、兄が喜んでいることを考えれば、何も言うことなど出来ない。
「今日はゆっくりして行けるのか?」
それなら一緒に食べよう、と静雄が誘いかけた瞬間。
パッパッと二回、車のクラクションが鳴り響いた。気付けば、すぐ近くに一台の車が停まっている。
「ごめん。あまり時間はないんだ」
幽はその車に目を向けて、残念そうにため息を吐いた。つられて静雄もそちらを見遣って、帰宅した時からそれが近くに停車していたのを思い出す。
「もしかしてあれ、お前の?」
「うん。マネージャーさんが乗せてきてくれて」
「そっか。仕事、忙しいのか?」
「少しね。今の撮影が、予定より長引いてて」
「そうか……。仕事じゃ、仕方ないよな……。でも、あんま頑張りすぎて身体壊さねえようにな」
「うん、ありがとう。兄さんも、身体に気を付けて」
「おう。俺の方こそ、ありがとうな。またメールもすっから」お互いに小さく笑い合って、それから、じゃあまた、と幽は片手を振って車へと戻って行った。それを見送って、静雄は短い会話を惜しむようにため息を吐く。
そこに、黒い影が近付いた。
作品名:Trick or Treat? 作家名:ユトリ