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空白に融ける

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外の世界の季節が“冬”になって、大分日が過ぎた
実家だと冬の夜空は澄んでよく星が見えたものだけど、東京じゃ冬でも星は遠い
その代わりに鮮やかなネオンがきらきら光り、世界を彩る


そんな光景を帝人は地上から高く高く離れた場所から見下ろし、一つ息を吐いた
触れる窓はひんやりとしており、外の寒さを教える様だ
しかし帝人がいる空間はそんな外の寒さとは無縁だった
何時の間に冬が来ていたのか分からないほど、完璧に整えられた空調設備がここにはある
だから帝人はつい最近までもう冬が来ていたのを知ることはなかった
ネットも断たれ、すっかり時間感覚を失ってしまった帝人がどうやって冬を知ったかといえば、
この頃外から帰ってきた“彼”に触れたとき、やけに冷えているな、と思ったことがきっかけだったぐらいで


無駄に綺麗な部屋に、無駄に広いベッド
それだけがある空間で帝人は一日を過ごす
今日は何日目?あぁもうとっくに忘れてしまったっけ
たしか夏休みぐらいから此処に来て、そしてもうずっと此処にいて


元気に、してるかな(誰が?)
心配、してるかな(なにを?)
怒られ、るかな(どうして?)
また、会えるかな(誰と?)




元気でいて、と願ったはずだった
心配しないで、と願ったはずだった
怒らないで、と願ったはずだった


会いたい、と願った はずだった






(…僕、は)




その時、




――がちゃ、り


突如響いたドアのノブを回す音に、帝人の細い肩がびくりと揺れた
恐る恐るドアの方向に視線を向ける
ドアはゆっくりと開いていき、そして完全に開き切った先にいたのは、漆黒と深紅の色
その色を認めて、帝人は仄かに笑ってその色のもとへと駆ける


じゃらり、じゃら じゃら


重たい金属音が耳に届くのも気にせず、帝人は駆けて、駆けて、その色の胸元へと飛び込んだ


「わっ…と、今日は随分大胆なお出迎えだね」
「…そんなこと、ないです」
「まぁ俺は嬉しいけどね……ただいま、帝人君」
「おかえり、なさい……臨也さん」


臨也はぎゅうぎゅうと帝人の細い肢体を強く抱きしめる
苦しいですよ、と帝人が漏らすので、臨也は少しだけ抱きしめる力を弱めた
その代わりに額にちゅうと短いキスを落とす


「臨也さん、」
「んー?」
「臨也さん、冷たいですね」


手を伸ばして臨也の頬に触れれば、指先からひんやりとした冷たさが伝う
臨也は帝人の手の感触に目を細めて笑った


「逆に帝人君の手は暖かいね」
「臨也さんが冷たいだけです」
「だって外は寒いからね」
「…僕は、ずっと出てないから分かりません」


そろそろと手を離そうとすれば、その手を臨也が掴んだ
ずっとポケットにでも入れていたのだろうか、掌はほんのり暖かい
掴まれた手はそのままに、帝人が臨也をじっと見つめていると、臨也は今度は困ったように笑う
そしてぱっと手を離したかと思うと、そのまま帝人を抱き上げた
帝人は驚きで眼を瞬かせるが、臨也は気にすることなくすたすたとベッドの所まで向かうと、どさりと帝人の肢体をベッドに沈み込ませる
じゃら、と一際大きく金属音が響いた




作品名:空白に融ける 作家名:朱紅(氷刹)