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魔法の解き方(米英)

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床の魔法陣にありったけの魔力を込めてから俺はサイドテーブルに置いておいた
魔法書を手に取った。
今日は10月30日。後一時間ほどで日付が変わろうとしている。
そして迎える明日は俺が一年で最も元気になるハロウィンだ。
「ふふふアメリカめ」
身体にほとんど魔力は残っていないが、明日に向けて嫌がおうにも気分が盛り上がって
いるのが感じ取れる。
去年はロシアという飛び道具を出してきたあいつに俺は助っ人を呼ぶことを禁止した。
もちろん助言も無しだ。
あいつは「そんなにロシアが怖かったのかい?」なんて的外れなことを言ってたけど
本当はそんなんじゃない。
俺とあいつ二人きりでずっとやってきたハロウィンに他の誰かが入り込むのが
嫌だっただけだ。
それは例え日本でも・・・いや日本なら・・・っ駄目だ。
例え、日本でも俺は入って来て欲しくない。
だってこの日だけは俺に冷たかったあいつが全力で相手をしてくれる日なんだ。
今はその、アメリカは俺の相手をしてくれるけど、付き合う前の4、50年前は
本当に酷かった。
俺が泣くまで、泣いてもアメリカは憎まれ口を叩くのを止めなかった。
アメリカ曰く「俺の気持ちにあんまりにもキミが気づいてくれないから」との
ことらしいが、それを差し引いたって酷かった。
だいたいあんなので好かれているなんて思うわけないだろ。
くたばれイギリスとかうっとおしいしいとかスコーンがまずいとか・・・
あー今でもスコーンまずいだけは言ってるな。クソ、いつかは昔みたいに
美味いって言わせてやる。
「・・・ん?」
グッと拳を固めて決意も固めていた俺はようやく足元の魔法陣が淡い光を
放っていることに気づいた。
つうか、発動しかけている!?
まずいと判断し、とっさに発動を止める魔力を送り込んだが残りカスみたいな魔力では
三日三晩丹精込めて作り上げた魔法陣の発動を止めることはできなかった。
「―――――ッ!!」
逃げ出そうにもこんな魔力が溢れだしたらまずいことになる。
俺は覚悟を決めて硬く目を瞑り、発動する魔法に身を任せた。
音もなく発動した魔法陣は目を閉じていてもなお貫かんばかりの眩い白光を放ち
幾重にも重なった術式が俺の身体を包んでいく。
みしり、と微かに聞こえるのは俺の身体の骨が立てた音か。
「っ、う、あっ・・・」
床に埋まり、掌に爪が食い込み、口唇に血が滲むほど噛みしめても身体を
変えていく激痛は収まらない。
痛みには慣れていると思っていたんだが、身体の中を作りかえられていく痛みは
怪我とはまた違った痛みで俺の身体を苛んでいく。
(ちくしょう・・・)
意識がどんどん曖昧になっていく。
気を喪うわけにはいかないと最後まで踏ん張っていたが、いつしか俺は波に
攫われるように意識を遠く飛ばしてしまった。

どれほど時が経ったのだろうか。
身体を苛んでいた痛みはすっかり消え、部屋を照らしていた光は収まっていた。
とりあえず何に変化させられたのか確認しようとして俺は立ち上がる。
「―――――ッ!?」
思わず声を呑んだ・・・いや、仮に出していたとしてもそれは声にならなかっただろう。
立ち上がれることは立ち上がれた。
ただし四足で、だ。
足だけでは立ち上がれない。そもそも「人」ですらない。
蝋燭の明かりだけが光量の現在では詳しい色はわからないが、どうやら俺は動物に
なってしまったらしい。
それも犬や猫ではない。
もっと弱い生き物だ。
歩きにくい身体を引きずるように俺は部屋の片隅にあるデカイ鏡の前に立った。
「―――――(マジかよ・・・)」
ふわふわの毛に垂れ下がった耳。短い四足の足。今は確認できないが
きっとケツには丸い尻尾でもついているんだろう。
俺はよりにもよってウサギになっていた。
犬や猫ならまだよかった。
犬は鋭い牙があり攻撃力に事欠かないし、猫ならば多少の魔力も使える。
しかしウサギだ。
何もできない弱い草食系の獣。
(まるであの頃みたいじゃねぇか)
兄さんたちに矢を射かけられていたあの頃。
あの頃のように今の俺は無力だ。
しかもウサギの身では魔法を使うことすらできないから解けるまで待つしかない。
けれど、俺にはその解けるまでの時間を待つことすらできなかった。
だって今日はハロウィンだ。
誰にも邪魔されないで、俺とあいつだけで脅しあいをする日。
初めてした日からこの日だけはどんなに大切な公務があっても、喧嘩をしていても
必ず脅しあいをしてきたんだ。
そんな大事な日を過ごせないなんて嫌だ。
そうやって落ち込んでいる時間ももったいなくて、俺は慣れない四足歩行で
魔法陣の中心まで戻った。
(魔力を使えないどころか感じることも出来ねえのかよ・・・)
目を閉じて精神を集中しても、残る魔力の残滓すら感じ取ることはできない。
どうやら俺は本物のウサギになってしまったらしい。
後、今の俺に出来ることといえば・・・
「ピーピー(ピクシー!ノーム!!)」
必死に妖精たちにも呼び掛けてみたが、誰も答えてくれない。
それどころか間抜けな笛のような音が漏れるだけで鳴き声にすらならない。
(本当に無力だ)
あの頃と同じだ。何も変わっちゃいない。
そう考えるとじわりと視界が滲んだような気がして、慌てて短い前足で顔を拭う。
そんな簡単なことでも俺は容易くバランスを崩して、べちゃりと冷たい床に倒れ込む。
ひんやりとした石畳はあの頃よく寝っ転がっていた土よりもずっと冷たい。
無機質そのものの触感と冷たさが毛を通してじんわりと俺の身体を冷やしていく。
それでももう何もできないただのウサギの俺には立ち上がる力も無くて
ただただあの頃のように埋まることしかできなかった。
作品名:魔法の解き方(米英) 作家名:ぽんたろう