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魔法の解き方(米英)

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「・・・・・・わかったよ。一度だけなんだからね」
「ぷぅ」
何度も鳴いて抗議するとしぶしぶといった様相でアメリカは許可をくれた。
許可を貰った俺がいそいそと奴の口唇に口を寄せようとすると
がっちり身体を掴まれ、起き上ったアメリカの眼前にぶら下がされた。
眠そうなアメリカは俺のことを探るようにじっと見ている。
こうやってぶら下がっていると食べられる前の獲物のようでそれが嫌で
ぷぅぷぅ鳴きながら暴れるとアメリカは少しだけ高度を下げた。
(何したいんだよ。お前)
こちらを見ているだけでキスをさせるつもりもするつもりもないアメリカに
少しだけ悲しくなってくる。
やっぱり止めたとか言われるんだろうか。
そうかもしれない。
だって、さっき口は俺だけのものだって言っていた。
(俺は、俺なのに)
じわりと目の淵が熱くなる。
ウサギも泣くのだろうか?わからない。もし泣かないとしたら世界初の泣くウサギだ。
じっと俺を観察していたアメリカが不意に目元を緩ませて、俺の瞼の辺りに
キスを落とした。
ちゅっ、と濡れた音を立てて頬にも鼻にも落とす。

「・・・帰っておいでよイギリス」

その台詞の意味を悟る前にアメリカは俺の口にその柔らかい唇をしっかり合わせた。
「!」
しっかりと口唇を合わせた瞬間、眩い目を焼きそうな光が俺を包んだ。
発動できないはずの解呪の魔法が音もなく発動する。
猫になるときと同じように全身に身体の中を作りかえられていく痛みが走る。
ぎしぎしと軋むような痛みに耐えるように俺は目を固く閉じた。
その俺を宥めるようにアメリカが抱きしめる。
気を喪いそうな痛みの中、その温もりだけが俺の支えだった。

「わお。キミって本当に変だよね」
「変って何だよばか!」
再び目を開けたときには俺は人の形でアメリカの腕の中に居た。
久方ぶりの人としての再会だったが、そんな感動をぶち壊すかのような台詞に腹が立つ。
わかっていたけど、やっぱりこいつはKYだ。
せめて腕の中から抜け出そうとアメリカの腕に手をかけるとぎゅううと拘束する腕に
力を込められた。
少し痛いくらいの力に息が詰まる。
お前、自分が馬鹿力だって忘れているんじゃねえだろうな。
「よかった。元に戻ってくれて」
「アメリカ・・・」
少しだけ身体を解放されて、改めて向き合うとアメリカはまだ俺のこと
ウサギだと思っているんじゃないかっていうような笑みをこちらに向けていた。
それが少しだけ、ほんの少しだけ不意打ちだったから頬がかあっと熱くなる。
そんな顔を見られるなんて耐えられないから、胸に顔を押しつけると
またぬいぐるみかなんかを抱きしめるようにぎゅうっと抱きしめられた。
「いくらキミが不思議国家だからってウサギになるなんて非常識なんだぞ」
「俺だってなると思わなかったんだよ。つうか、よくわかったな」
「目の色とウサギにしては変な行動ばかりだったからね。俺が恋しくて
 ウサギになるなんて、さすがに予想がつかなかったんだぞDDDDD」
「ばかっ。魔法だよ魔法!」
恋しくてウサギになるとか何ばか言ってんだ。
あんまりにも恥ずかしくて睨んでもあいつは気にもしない。
それどころがさらに力を込めて俺を締め上げてきた。
出る、中身が出るっマジで。
「まったくもう。キミは本当に貧弱だなあ」
「自分の力を少しは考えろよばかあ!」
思わず怒鳴ったけど、本当は怒鳴るほど怒っていない。
ただちょっと悔しかっただけだ。
アメリカの言うとおり、どうせ俺は貧弱だし。
もう少し筋肉がつけば、こんな風に好き勝手にされねえのに。
や、今の状況が嫌だってわけじゃねえけど。俺にも男としてのプライドとかあるし。
「イギリス」
不意に真剣な声で呼ばれて顔を上げるとアメリカがちゅっと軽いキスをしてきた。
そういや、こいつの口唇は俺だけのもんなんだよな。
「・・・あのさ、お前の口唇って俺だけのものなんだよな?」
「なんのことかな?」
「ごまかすなって。・・・だからってわけじゃねえけど、俺の口唇もお前の物、むぐっ」
最期まで言わないうちにがっついたアメリカが俺の口を塞いだ。
舌を潜り込ませてきて絡め合う。
抵抗なんてしない。
深いキスをしたかったのはアメリカだけじゃない。
俺だってずっとしたかった。
「今年の勝負は引き分けだね」
「来年はぜってえ泣かしてやる」
「俺だって泣かしてあげるよ。いろんな意味でね」
さんざん人の口の中を荒らしまくったアメリカはそう言って笑った。
いろんな意味ってどういう意味だよ。
ツッコミたいけどツッコメない。
こういう意味だよって実践されたら困る。
実践するにしたって少し眠ってからにしたい。
「じゃあキミも元に戻ったことだし、少し寝ようか。いい加減眠いよ」
「俺、シャワー浴びてから寝るから先に寝てろ」
「駄目だよ。キミも一緒に寝るんだ」
「アメリカ!」
立ち上がろうとしたところを腕を引っ張られて、シーツに引き込まれる。
怒っても大した効果はなく、むしろもう眠り始めてやがる。
ううと唸って俺は抵抗を諦めた。
別に明日の朝一番に浴びればいいことだ。
抵抗を諦めた俺をアメリカは抱き枕よろしく抱きしめる。
いつもの馬鹿力ではなく、眠れる程度に緩めてある腕の温もりは
眠りの世界へと穏やかに引き込んでいく。
(元に戻れてよかった)
そうじゃなきゃこの温かい腕に抱きこまれて眠ることなんて出来なかった。
来年こそは失敗しないようにもっと念入りに準備しようと思う。
早くも来年のハロウィンに思いを馳せながら俺はアメリカの腕の中でそっと目を伏せた。
作品名:魔法の解き方(米英) 作家名:ぽんたろう