GUNSLINGER BOYⅤ
「どういうことなの、これ」
臨也の殺意と怒りがこもった視線をまともに受けて、新羅は冷や汗をかきつつ若干後ずさる。
怖い怖い。マジ怖い。
「臨也、ここ病室だからさ、落ち着こう」
「俺は落ち着いてるけど?」
確かに声は落ち着いている。
でも殺気が・・・殺気が。
確かに帝人の健康面での担当は新羅だが、こういう場面で自分一人に臨也の相手まで押しつけられるのは毎度のことながら理不尽だ。
とはいえ、他の技術部員達では怖気づいてしまってこういう状態の臨也を相手にできないのだから仕方ないといえば仕方ないが。
自分だって嫌だ。
臨也がの機嫌が最悪な理由は臨也の横のベッドで眠っている帝人にある。
「条件付け検査でちょっと負荷をかけすぎてね。帝人君が答えない質問があったからそれを答えさせようとして脳波が乱れたままちょっと質問を続けちゃって・・
いや、僕がやったわけじゃないよ?検査担当の人だって、まさかここまで拒絶反応が出るとは予想してなかったみたいだし・・」
「へー、予想できなかったで済むんだ。俺の物をこんな状態にしておいて。
明後日からまたコレに命預けて仕事するんだよ?いざという時に使い物にならなかったらどうしてくれるのかな。なんていうか技術部の連中って自分の研究と好奇心優先であんまり後先考えないよね。一度義体についてってさ、実践の現場で死にかけてみた方がいいんじゃないの?」
臨也は笑顔でそう言うが目が全く笑っていない上、声は若干ひきつっている。
検査の後気を失って医務室に運ばれた帝人の脳波はなかなか正常に戻らず、
先ほどから覚醒と気絶を繰り返しては苦しげに呻いたり泣いたり叫んだりと異常な状態だ。
目元は涙で、口元はよだれで枕はぐしゃぐしゃに濡れている。
なんとも悲惨な状態だ。
「まぁ・・・あと1時間もすれば流石におさまると思うよ」
「・・・・・薬は、」
「ん?」
「薬はつかったの?」
「ああ、でもそんなに強いのは使ってないよ。ただの精神安定剤さ。君が心配してるような記憶障害は起こらないよ。多分。」
「・・・・・」
臨也は無言で帝人を見つめている。
その表情は陰になっていて新羅のからはうかがえない。
「ねぇ・・臨也、君、本当にその態度で通すつもり?」
「俺も悟ったんだよ。色々。 どんなに感情があるみたいに装っても、所詮コレは人じゃない」
変に情を持っても不毛なだけさ。
新羅はため息をつき、臨也に帝人をまかせて部屋から退出することにした。
どうせいじっぱりな臨也のことだ。
自分がいたら帝人に好きなように触れられないだろう。
「兎は寂しいと死んでしまうらしいよ」
去り際に言ってやった。
「・・・冗談。義体と兎の共通点なんて寿命ぐらいだよ」
帝人君がこうなってまで言いたくなかったのは君のことみたいなんだけどね。
と、のどまで出かかって飲み込んだ。
作品名:GUNSLINGER BOYⅤ 作家名:net