【東方】東方遊神記10
時間を少し遡(さかのぼ)って、今度は謁見の広間を出たにとりの方を見てみよう。にとりが大襖を開けると、奇妙な格好をした幼い女の子が、にとりが開けたのとは逆の大襖に片耳を押し当てながら目をつぶっている。当然青蛙神のことである。なんだかウンウンと頷いているので、寝ているわけではないようだ。
「え・・・?誰?」
この娘が天魔様が言っていた、待っていた方なんだろうか。視線を巡らすと、もう御山ではお馴染の神様二柱、そして、友人で先輩の新聞記者 射命丸 文もいた。
「だいたい諏訪子は食事をする時いつも汚いんだよ、よくこぼすし、口ん中に食べ物が入ったまま喋るもんだから、色々飛ばすし」
「そんなこと言うんだったら、神奈子だって、家にいる時はいつもだらだらしてるじゃないかっ。そのくせお客さんが来たら見栄を張るんだから、笑っちゃうよ」
聞くからに不毛な争いである。小さな声で言い合っているのは、部屋の中にいる天魔たちへの気遣いか。
「・・・これは記事にする価値は無いなぁ・・・秘密本でも作ろうかな。いや・・・それもインパクトに欠けるなぁ・・・」
文は二人の口喧嘩の内容を一言一句逃さずに、ものすごいスピードでメモしている。
(なるほど、待っていたのは神様たちだったのか。それを文さんが案内して・・・あれ?でもそれならあたしの今日の謁見は許可されないはず・・・)
にとりは首をひねった。そんなにとりに最初に気付いたのは、高速(無断)取材中の文だった。
「あや?やっぱり天魔様と話をしていたのはにとりでしたか。頑張りますね~」
文は取材の手を止め、口喧嘩中の二人を放置して謁見の広間から出てきたにとりに歩み寄った。
「こんにちは、文さん。今日は何かそのお二方の用事があったんですか?あたしはいつも通り交渉に来て、普通に話をしていたんですが・・・」
「ええ、にとりは今日のお昼頃に起こったっていう地震騒ぎは、直接喰らっているでしょう?私はその時は人里へ取材に行っていたんで後から聞きましたが、この二柱はその地震騒動の説明と、そこの可愛らしいお嬢さんの紹介をしに来たんですよ。それで、たまたま良いタイミングに帰って来た私が、お出迎え兼案内役を拝命したというわけです」
文は未だに考え事をしている青蛙神を指さしながらやれやれと言った感じに言った。
「あぁ、なるほど。あの騒ぎはやっぱり守屋の神様がかかわっていたんですか。あの騒ぎの後すぐ村に天魔様の使いの天狗が来て、どうせ神社の神様が何かしでかしただけだろうから、特に大騒ぎすることじゃない。何の問題も無いという内容の通達があったから、あまり気にしてなかったですけど・・・」
文と話をしながらもにとりは壁に張り付いている娘が気なっていた。
「その娘のことが気になるのは解りますが、私もいい加減仕事を終わらせたいので、後にしましょう。っていうか、私も知り合ったばかりでよく知らないし」
「・・・はい、解りました。それじゃあたしはこれで失礼します。あっそうだ、天魔様が、どうぞ中へお入りくださいとのことです」
「了解しました。あぁそうそう、里の方に椛がいますから、顔を出してみたらどうですか?あなたなんか疲れてそうですし、良い気分転換になるでしょ?」
「あっはい。お気遣いありがとうございます」
そう言うとにとりはもう一度青蛙神を見てから、その場を去った。この後、にとりには幻想郷の歴史を変える一大計画を考えるという超特大仕事が待っている。意地になって受けてしまったが、安請け合いではなかっただろうか?先程の会話は軽い現実逃避だった。「・・・余計な事を気にしている余裕は無いね・・・はぁ~」
核融合エネルギーの研究は、何度も地底の現場まで通ったかいがあって、8割方完成している。あとはもう天魔の正式な許可を得て、核融合炉の製造、そして運用実験という段階まで来ている。にとりは研究を100%まで完成させたいという欲求不満とも戦わなければならなくなった。
「これは・・・冗談じゃなく胃に穴が開くよ・・・」
まぁ引き受けた以上自分の責任だ。全力を尽くすことだけを考えればいい。幸い納期といったような制限時間はない。要は自分がギブアップしなければいいんだ。
「それって、ある意味制限時間があることよりもきついんじゃないのかな・・・?」
(だめだ。今何かを考えたって全部ネガティブな方向に行ってしまう。今日一日くらいは休んでしまった方がいい。里の方に椛がいるようだし、久しぶりに一局将棋の相手になってもらおう。最近全然指してないから、ぼろ負けしそうだけど、文さんの言うとおり、いい気分転換にはなるだろう)
にとりは考えがまとまると、大本殿を出て椛を捜しはじめた。
「え・・・?誰?」
この娘が天魔様が言っていた、待っていた方なんだろうか。視線を巡らすと、もう御山ではお馴染の神様二柱、そして、友人で先輩の新聞記者 射命丸 文もいた。
「だいたい諏訪子は食事をする時いつも汚いんだよ、よくこぼすし、口ん中に食べ物が入ったまま喋るもんだから、色々飛ばすし」
「そんなこと言うんだったら、神奈子だって、家にいる時はいつもだらだらしてるじゃないかっ。そのくせお客さんが来たら見栄を張るんだから、笑っちゃうよ」
聞くからに不毛な争いである。小さな声で言い合っているのは、部屋の中にいる天魔たちへの気遣いか。
「・・・これは記事にする価値は無いなぁ・・・秘密本でも作ろうかな。いや・・・それもインパクトに欠けるなぁ・・・」
文は二人の口喧嘩の内容を一言一句逃さずに、ものすごいスピードでメモしている。
(なるほど、待っていたのは神様たちだったのか。それを文さんが案内して・・・あれ?でもそれならあたしの今日の謁見は許可されないはず・・・)
にとりは首をひねった。そんなにとりに最初に気付いたのは、高速(無断)取材中の文だった。
「あや?やっぱり天魔様と話をしていたのはにとりでしたか。頑張りますね~」
文は取材の手を止め、口喧嘩中の二人を放置して謁見の広間から出てきたにとりに歩み寄った。
「こんにちは、文さん。今日は何かそのお二方の用事があったんですか?あたしはいつも通り交渉に来て、普通に話をしていたんですが・・・」
「ええ、にとりは今日のお昼頃に起こったっていう地震騒ぎは、直接喰らっているでしょう?私はその時は人里へ取材に行っていたんで後から聞きましたが、この二柱はその地震騒動の説明と、そこの可愛らしいお嬢さんの紹介をしに来たんですよ。それで、たまたま良いタイミングに帰って来た私が、お出迎え兼案内役を拝命したというわけです」
文は未だに考え事をしている青蛙神を指さしながらやれやれと言った感じに言った。
「あぁ、なるほど。あの騒ぎはやっぱり守屋の神様がかかわっていたんですか。あの騒ぎの後すぐ村に天魔様の使いの天狗が来て、どうせ神社の神様が何かしでかしただけだろうから、特に大騒ぎすることじゃない。何の問題も無いという内容の通達があったから、あまり気にしてなかったですけど・・・」
文と話をしながらもにとりは壁に張り付いている娘が気なっていた。
「その娘のことが気になるのは解りますが、私もいい加減仕事を終わらせたいので、後にしましょう。っていうか、私も知り合ったばかりでよく知らないし」
「・・・はい、解りました。それじゃあたしはこれで失礼します。あっそうだ、天魔様が、どうぞ中へお入りくださいとのことです」
「了解しました。あぁそうそう、里の方に椛がいますから、顔を出してみたらどうですか?あなたなんか疲れてそうですし、良い気分転換になるでしょ?」
「あっはい。お気遣いありがとうございます」
そう言うとにとりはもう一度青蛙神を見てから、その場を去った。この後、にとりには幻想郷の歴史を変える一大計画を考えるという超特大仕事が待っている。意地になって受けてしまったが、安請け合いではなかっただろうか?先程の会話は軽い現実逃避だった。「・・・余計な事を気にしている余裕は無いね・・・はぁ~」
核融合エネルギーの研究は、何度も地底の現場まで通ったかいがあって、8割方完成している。あとはもう天魔の正式な許可を得て、核融合炉の製造、そして運用実験という段階まで来ている。にとりは研究を100%まで完成させたいという欲求不満とも戦わなければならなくなった。
「これは・・・冗談じゃなく胃に穴が開くよ・・・」
まぁ引き受けた以上自分の責任だ。全力を尽くすことだけを考えればいい。幸い納期といったような制限時間はない。要は自分がギブアップしなければいいんだ。
「それって、ある意味制限時間があることよりもきついんじゃないのかな・・・?」
(だめだ。今何かを考えたって全部ネガティブな方向に行ってしまう。今日一日くらいは休んでしまった方がいい。里の方に椛がいるようだし、久しぶりに一局将棋の相手になってもらおう。最近全然指してないから、ぼろ負けしそうだけど、文さんの言うとおり、いい気分転換にはなるだろう)
にとりは考えがまとまると、大本殿を出て椛を捜しはじめた。
作品名:【東方】東方遊神記10 作家名:マルナ・シアス