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マルナ・シアス
マルナ・シアス
novelistID. 17019
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【東方】東方遊神記10

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 テンションが下がり気味のにとりを見送ると、文は未だに口喧嘩を以下略(笑)の二人と、未だに壁に以下略(笑)の少女?を見て、今日何度目かの溜息をついた。
(青蛙神さんのことはよくわかりませんが、こちらの御二人は、顕界で名を馳せた、最上位の神様なんですけどねぇ・・・)
因みに神奈子が軍事、武力を司る軍神、諏訪子が太古の神獣『ミシャグジ』を束ねる土着神、つまり最も民草に畏怖、尊敬された神の、しかも最上位だった存在である。しかし普段の姿は見る影もない。冒頭の諏訪子の暴走では、その片鱗が垣間見れたが。
(まぁ、親しみやすいと言えば聞こえは良いですが)
そんな事を思いながら、文は
「スゥー」
と大きく息を吸い込み、
「ワァ!」
と一際大きな声を挙げた。
「ひゃっ!?」
「うおっ!?」
「なっ!?」
文の声に三者が三様に驚き、文の方を向いた。
「皆さんもう面白過ぎです。にとりはもう話を終えて帰りましたよ。いつまでも取材対象になりそうなことしてないで、さっさと中に入りましょう。天魔様がお待ちです。っていうかもう待たされ過ぎて怒っているかもしれません」
言葉は結構きつめだが、声のトーンや表情を見るに、なんだか楽しそうである。文も守屋の神様には好感を持っているのだろう。
「まったく・・・こっちが約束をしたわけじゃないんだけどねぇ・・・でも、確かにこれ以上待たせると、笑顔で痛烈な嫌味とか言われそうだね。今日はまだ用事がけっこうあるし、早く済ませよう」
「うん、じゃあ僕いちば~ん!ほら、青ちゃん行こう!」
そう言って諏訪子は青蛙神の手を取り、勢いよく大襖を開けた。
「うわっととと!諏訪子殿っ」
「こんにちわー」
「邪魔するよ」
神奈子もそれに続く。
「・・・普通は案内役の私が先頭に立って部屋にお通しするもんなんじゃないですかね?」
文の言葉は誰の耳にも入らず、空しく響いた。
 ドカドカと騒がしく入ってきた神奈子たちを、御影は笑顔で迎えた。見たところ、神奈子が危惧していた嫌味ったらしい笑顔ではないようだ。
「ようこそ、お待ちしておりました。神奈子様、諏訪子様。上座から失礼いたします」
美理も二人に対して丁寧に黙礼する。一番最後に入って来た文が、御影の傍まで近づき、片膝をついて報告する。
「遅くなって申し訳ありません。守屋神社からのお客様を御案内致しました」
先程とは雰囲気が豹変している。普段は飄々としていて、おちゃらけた面もある文だが、こう見えて引き締め所を知っている。常識人である。まぁ、幻想郷では常識に囚われてはいけないという話は置いておいて。
「御苦労さま、文。ずいぶん遅かったけれど、何かあったの?」
うん、これは嫌味成分は全く含まれておらず、純粋に不思議だったんだろう。
「それは・・・」
本当は遅れた原因を声を大にして言いたいが、立場上そんなことはできない。文は言い淀んでしまった。まぁでも神奈子たちだったら正直に言っても別に怒らないだろうが。
「文のせいじゃないよ。あたしらがいろいろ話しこんだり、寄り道したのがいけないんだ」「うん、そうなんだ、つい話し込んじゃって。ごめんね、御影ちゃん、美理ちゃん」
むしろ普通に本人たちが自分で言った。諏訪子はペロッと小さな、蛙の神様・・・厳密には違うんだけど、それに似つかわしくない可愛らしい舌を出して、おどけながら謝罪の言葉を述べた。
「・・・可愛い・・・」
「天魔様」
一瞬余りの諏訪子の可愛さに惚けかかった御影を、すかさず美理が諫(いさ)めた。さすが側近・・・と思ったが、なんだか美理の顔も少し紅潮している。美理も諏訪子の可愛さにちょっとグラついたのか。あの(一部を除いて)寡黙で、クールが服を着て歩いているような美理までグラつかせるのだから恐ろしい。可愛いは武器である。
「いえいえ、何も無ければそれでよいのです。それで、今日はどういった御用件で?」
自分で待っていたと言っておきながら、あえてこの言い方をした。
「・・・まぁ本当はそっちも解ってるんだろうけど、原因側が言うのが筋だからね。じゃ、まず、今日の昼ごろに起きた地震。あれはうちらが原因だ」
「というかむしろ僕の仕業です。ごめんなさい」
諏訪子は御影たちに向けて深々と頭を下げた。
「・・・・・」
青蛙神はその姿を見てまた驚いている。いい加減に慣れてほしいものだ。
(相変わらず神としては想像もつかないことを平然とやってのける・・・)
確かに天狗は妖怪の中でもとても頭の良い部類で、賢者と呼ばれることもあるが、所詮は妖怪である。神と比べ、存在の差は月とスッポンである。・・・いや、少し言い過ぎか?兎も角、まだまだ顕界思考である青蛙神には馴染めない状況だ。慣れるためには少なくとも数ヶ月間は幻想郷で暮らす必要があるだろう。
「いやいやっ!別にこちらには被害は何もありませんでしたので、頭をお上げください・・・あれ?」
御辞儀している諏訪子を見て、御影は少し違和感を覚えた。
「諏訪子様、あの可愛らしい帽子はどうなさったんですか?」
さて、これは本心で言っているのか、お世辞で言っているのか?
「っ!」
帽子の話題が出た途端、青蛙神の体がビクッと跳ねた。無理もないが。
「あ~・・・それはねぇ・・・」
諏訪子はバツが悪いのか、神奈子に説明ヨロシクッ!といった視線を送った。
「・・・やれやれ・・・そのことで、御影たちにちょっと紹介したい娘がいるんだ。ほらっ、青」
神奈子は青蛙神を手招きして、自分の隣に来させた。