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ろろろまんす【ゾロサン】

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ろろろまんす



 店の裏方に引っ張られてきてみれば、巨大ないのししが、目の前にある。
「…」
「これで文句ないだろ」
 胸を張って鼻の頭をかかれて、ぐうの音も出ない。



 生臭坊主ロロノアゾロは大食らいだった。
 その胃袋の具合と言えば、この「風車」常連のルフィ(親分)と張れる位だ。
 そして現在長い放浪の末ほぼ無一文でもあるからして…。
「今日こそツケ払えよ」
…ということになるのである。

 強気な女将は珍しくこのお坊さんに苦手意識をもっているらしい。確かに常に顰めた顔は女性からしてみれば怖いの一言だろう。
 しかもおそらくこの坊主は馬鹿でもない。言葉で言い負かせられないのだ。
 それはサンジにもなんとなく感じられたので、ツケの請求はサンジがかわりに行った。
 暖簾をくぐってすぐの席の指定席にしているロロノアは、明後日の方向を見ながら、怒鳴りを聞いているのか、いないのか。
「あーはいはい」
「おい、きいてんのか!?」
 聞き流そうとする態度がサンジを苛立たせる。
 サンジだって、ここまで支払いを待ったことで、可愛らしいビビちゃんを助けた礼はたっぷりしたつもりだ。
 経営も苦しい中、毎月こつこつ故郷へ仕送りしているおナミさんのため、もう黙っていられない。

「いいか、こちとていつまでもタダ飯食わせてるわけにはいかねぇんだよ!!」
 こうキツく言いたくなるのにはもう一つ理由がある。
 ゾロは作ったものを味わって食べてくれていない。
 なんとおいしいという言葉をきいたことさえない。
 ここ最近お目にかかったことの無い反応は、料理人のプライドをいたく傷つけるのだ。
 ゾロに並ぶツケ帝王のルフィは毎回うまいうまい言ってくれてるというのに…

 とにかくしつこく請求しつづけたところ、不機嫌さを隠さない声が返ってきた。
「……じゃあ、もし」
「あぁ?」
 緑髪の破戒僧は自分の眉間を親指でつついた。
「ツケ以上の金をもってくれば、またメシ食わしてくれんのか?」
 サンジは、相手がいつになく真面目に考えている事に気付かない。
「…ああ、いいとも。釣りくれてやってもいいぜ」
 そして、口を滑らせた。

 にやりと笑ったロロノアゾロは、サンジのここぞというときの律儀さを知っていたのだ。

 話は冒頭へ戻る。



「釣銭、出るだろ?」
「……確かにこれは釣りが出る」