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ろろろまんす【ゾロサン】

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 ぼたん鍋は風車の冬の人気メニューだ。
 新鮮で臭みのない、いのしし肉を使って作るそれは、卵をからめるとそれはもう絶品。
 女将にお金出してでも食べたいと言わせた、美味を極めた鍋。
 ところが最近いのししが乱獲される事件があったため肉の値が高騰し、風車でもぼたん鍋を提供できなくなっていた。
 結果売れ行きは例年より落ち込み、女将と一緒にうなだれていたのだが…
 そこへ、ゾロのもってきたいのしし、というか、肉である。
 喉から手が出るほどほしい。
 悔しいが素直に認めざるを得ない。
 何せそのいのししは相当立派なもので、普通に仕入れた場合でも高値を出すこと間違いなしなのだ。
 だがいかんせんゾロの発言を本気と取っていなかったサンジには釣りの用意がない。

 ちらりとゾロを窺うとそんなこったろうと思ったよといわんばかりの嫌な笑い方をしている。
「…あの、やっぱ釣りがなくちゃダメですかお客様…」
 できる限り丁寧に聞き返してみた。
 この図。
 強者と弱者が完全に逆転してしまった。
 屈辱である…  しかし男サンジはおナミさんのために下手に出ることを決めたらしい。

 ふと考えるしぐさを見せて、ゾロはぽつりとつぶやく。
「…まあ、金じゃなくてもいい」
「ホントか!?恩に着る!!」
 これで数日限定ではあるがぼたん鍋が復活できる。
 お客さんの喜ぶ顔を思い浮かべて、サンジはにっこり微笑んだ。
 …のもつかの間。
 次の瞬間、

「じゃ、これ釣り代わりな」

 サンジはバッチリ大切なものを奪われてしまった。



「いやー、ここのぼたん鍋はやっぱ格別だな〜」
「あらまっ、ありがとう親分」
「てぇへんだてぇへんだーっ!!」
「ウソップじゃない。いらっしゃい」
「ほうひはふほっふー」
「やっぱここにいたかぁ親分!!…ってちゃんとメシ飲み込んでから話してれよ…」
「ふぁるーい」

「いらっしゃーい、ませ……」
「うぎゃっ!」

 ウソップは思わず今まであげたこともないようなヘンな悲鳴をあげてしまった。
 地の底から這い上がってくるような声は、確かに見慣れた金髪の板前からきている。
「…サンジ、おまえどうしたんだ…?」
「へへへ……なんでもねぇよ…ふへへへ…」
「お前キャラ違ってるぞー」
 サンジは暗い影を落としながら葱を切っていく。