ポッキーデイ【1本足りない】
ポリポリと少しずつ、地味に進んでいく。ポッキーゲームをやる気ではあったがさすがに0距離ハプニングまでは狙っていない。俺だって場所と状況は弁えてるさ。まあ一回ぐらい・・・と思わないでもないがいきなり最初っからなんてそれじゃあ古泉の怒りを買うことは必死だ。3、4回ぐらいやってから軽く・・・が妥当だろう。
ポキッ
「おっ」
「折れましたね」
「俺のが長いな」
「そうですね」
終わるときはあっさりだ。折れてしまえば終わりだ。
「じゃあ次いくか」
「まだするんですか?」
「一回だけじゃあな」
ポッキーが減ってないのを見れば不真面目だなんだと言われていちゃもんつけられかねない。
「ほら」
仕方なく、というふうにまた俺の反対の端をくわえ第2ラウンド開始だ。
3、4回どころか7、8回繰り返してわかったことがある。
ぱきっ
「また折れてしまいましたね」
古泉がわざと折っている。
あと少し、というところで毎度折れるのだ。それをふまえて古泉を見ていると後少しのところでほんの少し動いて自分から折っているのがよくわかる。
くそっ、見透かされているようで忌々しい。
「次だ次っ」
「もう、この辺りでやめませんか?」
「やめん」
ここでやめるのは悔しいじゃないか。
くそっ、つぎ、つぎこそ・・・
またもポリポリと地味な音が、ハルヒたちのにぎやかすぎる声に紛れて地味に俺と古泉の間で響く。
くそっ、今度こそ・・・古泉の好きにさせてなるものか。
あと少し、あと少しでポッキーがなくなる。古泉との距離はかなり近い。今までと同じならそろそろ折られる。いや折られてなるものかっ!
「んんっ!?」
折られてなるものか!そう思った俺は古泉の頭を両手でがっちり挟んで固定した。驚いた古泉に構わず俺はそのままポッキーを食い進め・・・
「あっ!こぉらキョン!!手を使うのは反則よー!!」
「おわっ!!」
いきなりハルヒから怒鳴られて、折らないようにと思っていたポッキーを結局折ってしまった。くそっ、ハルヒめ・・・図ったようなタイミングで邪魔しやがって。
「あー!!」
「もうっ、キョン、勝負に真剣になるのは評価してあげてもいいけど反則はだめよ反則は!これじゃあ本番が思いやられるわ」
結局俺の思惑はかなわず、11月1日のポッキーゲーム練習はそこそこ勝つことができても、俺の思ったとおりにならなかった、と言う意味では完全敗北だ。
こうなったら本番だ。本番見てろよ古泉。安心した顔して油断してるがいいさ。
11月11日、ポッキー&プリッツの日、ポッキーゲーム本番を首を洗って待っていやがれ!!
end
作品名:ポッキーデイ【1本足りない】 作家名:由浦ヤコ