2人だけのハロウィン
少し考えれば…可能性に気付くことができただろう。
アイツは…留守だった。
「…俺様…かっこ悪いぜ…」
自分は何を期待していたのだろうか。
アイツなら…家に居て…驚いた顔で俺を迎え入れてくれるだなんて…。
あのときのように…2人でハロウィンを祝えるんじゃないかって…。
「しかたねーし…帰るか。」
ふぅ…深く息を吐き出し…振り返った瞬間…
「トリックオアトリート!ギール君っ♪」
「おわぁっ!?」
予想だにしない出来事に…俺は思わずおかしな声を上げてしまう。
呼吸を整え…声のする方を見上げると…仮装したアイツがいた。
「おまっ…イヴァン!いきなり何すんだよ!びっくりするじゃじぇねーか!」
「それはこっちの台詞だよ。人の家の前で何してるのかな〜?
……まぁ、仮装してる時点で…大体想像はつくけどね。」
イヴァンは悪戯を成功させた子供のような笑顔を見せた。
くそ…これじゃ、立場が逆だ…。
でも…ここで引き下がったら俺様がすたる…!
こいつは今帰ってきたところだし…どうせお菓子なんて用意していないだろう。
こうなったら思いっきり悪戯してやる…。
「…イヴァン…トリックオアトリート!!って事で悪戯するぜ!けせせせせー!」
「…いいよ。中に入って。僕の手作りでよければ…お菓子あるし…お茶くらい出すよ。」
一瞬…イヴァンが何を言ったのかわからなかった。
お菓子が…あるだと…?
「え…なんで…?」
「何となく…かな。今年は君がハロウィンに来てくれそうな気がしたんだ。
…で、入るの入らないの?あの時よりは…作るの上手くなったと思うんだけど…。」
あぁ…お前も、2人だけのハロウィンの事を覚えて居たんだな。
何故だろう…胸の辺りが…一気に暖かくなった。
「ありがたく…戴いてやるぜ!」
2人だけのハロウィンパーティ。
あの時と同じありあわせの衣装で。
あの時よりおいしくなったアイツの手作りのお菓子で。
あの時と変わらない…笑顔のアイツと…
2人だけの小さなハロウィンを祝おう。
「…ところで…そんな格好でどこに行ってたんだ?」
「ん〜菊君に頼まれてね〜アル君とこで受付してたんだー。」
作品名:2人だけのハロウィン 作家名:雪夏