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【ギアス】シーラカンス・ペイン

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記憶が戻り本当の意味でこの世界に戻ってきたとき、名前さえもすべて自分は喪われたものだと識った。どれくらい時間が経ったのかも混乱する自分に彼女は告げた。
「『おはよう』、ライ。お前に再び会うことができて私は嬉しい」
「C.C.――礼を返す代わりに教えてほしい。「我」は何だ」
柔らかい仕草で彼女の右手がこちらに伸べられ、左手が空を掴んで広がる。優雅なレヴェランス。彼女の表情は変わらない。
「汝、夕宵に君臨する瞬きの王。さあ最初の瞬きは終わってしまった」
「終わった? 止まっていたのではないと? 記憶を目覚めさせたのは何故」
身体が重くて動かない。視界には彼女しかいない状況で、しかしどうしようとも思わなかった。学園で記憶のなかった自分がどんな道化だったかも今はいい、本当の最期の記憶がないのであれば、判断の仕様がない。
「美しい滅王、お前に新しい名をやろう」
愛しいひとが待っているぞ、そう告げて彼女は去った。

次にはっきりと意識が目覚めたのは君臨する偉大な現王の前だった。
「ライル・ヴェスパー・ブリタニア」
知らない名前で呼ばれる。
そうか、蘇った祖はその名がつくか。傍で支えている人たちは皆顔を伏せていた。己の身体を覆っているものは騎士の礼服のようだ。白い生地に金の飾り。その昔纏っていたようなものではない。
厳かに告げられる声がライに意味をつけていく。後ろに集められた彼らはナイトオブラウンズというらしい、一様に己のカラーのマントを身にまとい、礼を取っていた。
「Rounds Nought― NumberLess.」
『無』、それが己の役割か。
理解したライのマントを傍付きの見知らぬ女性が三人がかりで仰々しくかける。妙な加工がしてあるマントは軽やかに、そして手にするとずしりと不思議な感触のするものだった。急にトランスパランという名が脳裏をよぎる。模様を残して透けているのに質感はあるそのマントはそれでも妙にリアルだった。
そう、彼女は何と言ったか、「光がすべて集結すると透明になるらしい。」
かつて光の子と謳われた己をさして言っているのだろうか。
辞去し、振り返るとラウンズナイトの顔をしていたスザクやノネットがライのマントを引っ張り改めて彼らなりの挨拶をしてきた。
「やったな、ライ!」
「ストレングス」
ノネットさんと文字で呼べなかった。