angel lamp1
真っ暗な世界に、急に光が溢れ、僕の耳に、懐かしい声が届く。
「ほら、ここにいるわ」
懐かしい声。愛しい人。
驚いて顔を上げれば、逆光の中、人影が僕を見下ろしていた。
「マスター・・・!」
思わず漏れた声は、酷く耳障りで、それ以上の言葉が出ない。
光の中のマスターは、顔を横に向けると、
「聞こえたでしょう?声も掠れてるし、色も抜けてる。本当に、こんな古いのでいいの?」
光の中、マスターは言葉を続ける。
「大体、これは娯楽用の人形なんだから、役に立たないんじゃない?もっとちゃんとした・・・新しいのを作ってあげるわよ。歌って欲しいのなら、綺麗な声のほうが、いいでしょうし」
マスターの隣に、影が揺らめいた。
先ほどから話しかけているのは、この人なのだと、ぼんやりと思う。
男か女かも分からない影に、マスターは首を振って、
「あなたがいいのなら・・・でも、ガラクタを押し付けるみたいで、嫌だわ」
ガラクタ。
マスターの言葉が、胸に突き刺さる。
声も掠れ、髪の色も抜けてしまった僕は、役に立たないガラクタでしかない。
もう一度、影が揺れた。
マスターは、ため息をつくと、僕の方に顔を向け、
「いらっしゃい、カイト。あなたに、新しいマスターを紹介するから」
作品名:angel lamp1 作家名:シャオ