angel lamp1
ごとりと馬車が揺れ、ゆっくりと進み始める。
あの男―マスターの婚約者だと、教えられた―が、手綱を握り、馬を歩かせたのだ。
窓から身を乗り出せば、マスターの姿が、徐々に小さくなっていく。
嫌だ。行きたくない。
僕を傍に置いて。どこにもやらないで。
倉庫の中でもいい。マスターの元にいられるなら。
出かかった言葉を、すんでのところで飲み込んだ。
せめてもと、マスターに小さく手を振るが、マスターは身じろぎもしない。
もう、僕は、あなたにとって、いらない存在なのですね。
だから、ためらいもなく、手放して。
こんな恐ろしい姿の女性に、僕を譲るのですね。
それなら、いっそ、壊して欲しかった。
ぼんやりと、流れいてく景色を眺めていたら、隣に座った彼女の囁き声が聞こえた。
「ごめんなさい・・・無理に連れてきてしまって」
そんな白々しい言葉は、聞きたくない。
少しでも悪いと思っているのなら、僕をマスターのところに帰して欲しい。
帰りたい。
僕の大切な、マスター。
作品名:angel lamp1 作家名:シャオ