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あなたが銀河に戻るまで

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1. いつか銀河に戻るまで



 ガタンゴトンという規則正しいリズムに、体が微弱にゆれて、アレルヤは目を覚ました。
 ここはどこだろう、と眠っていた目を少しばかりこすって、覚醒のために起き上がる。
 眠っていた場所は、コンパトーメントの中で、アレルヤのほかに、そのコンパートメントには誰も乗っていなかった。

 軌道エレベーターのように、不安定ではあるがゆれのない交通機関しか知らない彼には、この汽車というものに乗り込むのは初めてのことだった。
 そのあたりで、彼はこれが夢であることに気がつく。「どこだろう」、とアレルヤは呟いた。こんなところへ来た覚えなど、なかったから。
 彼は立ち上がったまま、コンパートメントの中を見渡した。カーテンの引かれた車窓を、カーテンを開けてのぞいてみる。
 彼は驚いた。そこには見慣れた宇宙が広がっていた。「どこを走っているんだろう、これは」、と、彼は少しばかり不安に襲われた。自分の他に、誰かここにいないのだろうかと、ふと思いつく。彼はカーテンをまた閉めなおし、そうして窓に蓋をしてから、コンパートメントを出た。

 彼は通路にでて、まず一番先に、目の前のコンパートメントのドアを開けた。ドアはスライドしてすべり、誰もいないコンパートメントを露にする。
 彼は「ここは誰もいないのか」、とひとつため息をついた。そうつぶやいた独り言さえ、すとんと床に落ちていくような静けさがあった。
 アレルヤは気がついた。人の生気がまったく感じられないことに。「もしかして、僕以外誰もいないのか」、と今度アレルヤの口からおぼれ落ちた言葉は、なぜか先ほどのように、すとんと床には落ちず、その空間に響きだした。空気でわかる。誰かが動いた。ただ、その姿が見えない。
 彼は、ただ空のコンパートメントが続く通路をひたすらに歩いた。わずかに見える丸い窓から、ひとつひとつコンパートメントの中をのぞいていく。
 彼以外の人間はいなかった。他のもの、たとえば動物や、機械の類さえ見当たらない。彼は通路の一番奥を見つめた。少し頭が痛くなる。ずっと続いていそうな気さえして、少し眩暈がしたのだ。


 彼はため息をついて、まだ中を覗き込んでいないコンパートメントの扉に寄りかかった。「つかれた…」、とつぶやいた後、ふっと背中の違和感が消えてなくなる。
 バランスを崩し、彼はふら付いた。「すまない」、とすぐに声が飛んでくる。彼はなんとかその場に踏みとどまり、それから、立て直した体をすぐに反転させて「ティエリア!」、と、名前を呼んだ。「とりあえず、座ってくれないか」、まるで犬が勢いよく尻尾を振っているようだな、とティエリアは思う。よかったよぉ、とアレルヤはティエリアの前の席に体を沈め、はあ、とため息をついた。
 アレルヤは上から下まで、漆黒の服を着たティエリアに少し驚いて、「僕とティエリア以外に、もしかして誰も乗っていないの」、とティエリアに聞いた。ティエリアはまあ、そうだろうな、とそれに頷く。
 ティエリアは窓際のわずかなスペースにひじをついて、頭を凭れ掛らせ、足を組んだ。
 彼は黒のインバネスコートを着込んでいる。足元も革のロングブーツで、どこからどうみても冬のいでたちだった。
 アレルヤはというと、いつもの通り、CBの制服を着込んでいる。「寒いの」、とアレルヤは聞いた。ティエリアはさあ、と首を傾げて、「わからない」、と続けた。すとん、と沈黙が降りてくる。アレルヤは気まずさに、すこし五年前のことを思い出した。
「なんだか、今のっていうより、五年くらい前の、ティエリアみたい」、と彼はそれを口に出してみる。困ったように笑うと、ティエリアはそうだな、と頷いた。「確かに、そうだな」と、アレルヤを見ずに、窓の外を見て。
 アレルヤは戸惑った。すとんと落ちたままの沈黙は、どこかに転がってくれそうにもなく、話しかけようにも話の種が見つからない。仕方がなく、アレルヤも窓の外を覗き込んだ。

 窓の外は、どうにも動いているように見えなかった。無理もない。遠く見えているのは、まるで地球の、地上から見たような夜空だった。ここが宇宙であるのかも、アレルヤは自信がなかった。
 けれどもどこにも陸はないし、窓の外にあるのはぼんやりと浮かんだ大きな惑星だけだ。
 見たことのない、月に似たような星だ。けれどその惑星の方向はまぶしくて、あまりよく見ることが出来ない。
 なんていう星だろう、そうアレルヤは思った。「水星」、とティエリアが言う。「夢でも、見るのは初めてだろう」、?とティエリアはアレルヤに聞く。アレルヤはえ、ああ、うん、とティエリアの言葉に、曖昧に返事をした。そしてずっと思っていたことが正しいということに息をついて安堵した。「やっぱり夢の」、中なんだね、と彼が言う。
 ティエリアはそれに、「僕の」、と、続けた。「僕の夢の中だ」。

 アレルヤはふっと笑顔のまま凍りついた。それから、なんだってこんなところにきてしまったんだろうとも思った。思ったが、しかし、顔には出さないでおく。けれど、「どうしてこんなところにきてしまったんだろうな」、? そう、ティエリアが面白そうに聞くものだから、アレルヤは困ってしまった。
「君の夢の中だから、僕の思ってることですら筒抜けだっていうの」、!そんなのひどいや、あんまりだよ。アレルヤはそういって、頬を赤らめて困った顔でティエリアを責めた。ティエリアはまた穏やかに「そうだな」、と頷いた後、ゆっくりと目を閉じる。「そんなわけないだろう」、いくら夢の中でも、君の思っていることなんて解らないさ。ただ君の顔があまりもわかりやすかったから。そうティエリアは意地悪く言った。
 はあ、とため息をついたアレルヤは、妙に騒いだ心を落ち着かせて、ガタンゴトンと静かにゆれ続ける汽車のゆれに背中を預けた。「やっぱり今のティエリアだ」。
 少しばかりの違和感は感じるが、何故か驚くほど落ち着いた気分だった。「…どこまでいくの」、とアレルヤは窓の外を見続けるティエリアに問うた。
 ティエリアは何処だろうな、とアレルヤに、ではなく、むしろ自分に言うようにそうつぶやいた。「解らないんだ」。
 アレルヤは急に、ティエリアが泣き出したので、どうしたものかと頭を抱えそうになった。こんなときに、自分はそれをただ見守るという選択肢しかしらないのだ。あの人のようにその肩を抱いてあげることもできないし、あの子のように、ただじっと、泣き止むのをまって、泣き止むまで、手のひらくらいは握ってあげることもできない。アレルヤはそう思った。自分はそのすべを知らないのだ。
 ハレルヤならば、どうだろう、とぽたぽたと、頬を落ちていく涙をじっと見つめながら、アレルヤは思った。あるいは彼女なら、と。
 けれども、今ここにいない人間のことを心の中で勝手に思い出して候補にあげてみても、本人が来るわけでもなんでもない。アレルヤは声も出さずに泣くティエリアに、困り果てて、何を言おうか、本当に迷って、「も」、

「モノポリーしようか!」、と言った。
作品名:あなたが銀河に戻るまで 作家名:みかげ