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{ユーモレスク}脱毛の話

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「暴れないで!暴れるともっと痛いですからね」
女性アシスタントからのきつい注意が飛び、これ以上の痛みがあるときかされたギルベルトは瞬間的に委縮した。そこを狙って反対側のワックスも容赦ない勢いでばりっと
音をさせている。
(わー・・・いったそー)
「フランシスさん、あなたはやらなくてよろしいんですか?」
「え?知ってるくせにきいちゃう?」
「まあ一応マナーかと思いまして」
口元を扇子で隠しながらひょうひょうと言ってのける男を、フランシスは同じくにやりと笑って見下ろした。
目が合う。相変わらずの、黒い瞳であった。
「菊ちゃんオーナーがワックスしてくれるならやるけど?」
「フフ、・・・あなたにはワックスよりも薔薇の香りのオイルとクリームが似合いますよ」
では、後の事はよろしくお願いいたしますね、と言いながら、黒髪の雇い主はサロンの玄関へとつま先をむけて歩き出した。
後ろから叫びすぎて枯れた声の男が、「菊テメー後で絶対泣かす!」と声にならない声で吠えていたのは、はたして彼にきこえただろうか。