嗚咽を殺して泣く子供
俺がひときしり笑った後、タカ丸さんがぽつりとつぶやいた。
その表情は酷く心細そうで、母親からはぐれてしまった子供のようだった。
「…何度も同じこと言わせないでください。」
俺はそう言うと、タカ丸さんをぎゅっと抱きしめた。
耳元でタカ丸さんの泣き声がする。
それは必死に押し殺したものだったけど、タカ丸さんの顔は俺のすぐそばにあるのだから、その声も全部聞こえてしまう。
この期に及んで、まだかっこつけようとするのか、この人は…。全てを完全にさらけ出してはくれないこの人に、少し歯がゆくはあったが、それ以上に愛おしさがこみ上げてくる。
抑えきれない愛おしさを抱えながら、俺は情けないくせにかっこつけたがりな恋人を、よりきつく抱きしめた。
作品名:嗚咽を殺して泣く子供 作家名:knt