嗚咽を殺して泣く子供
タカ丸さんはぽつりとそう言った。
そんな…そんなのって…
「…こ、このバカ!バカ丸!!」
「…く、久々知くん…?」
いきなり声を荒げて怒った俺に、さすがのタカ丸さんもびっくりしたようだ。
「かっこいいとこしか見せたくないって…それじゃあ、いつもあんたにかっこ悪い姿見せてる俺が、バカみたいだ!…だいたい、いまさら情けない姿見たとこで、俺のあんたへの気持ちは揺るがねえよ、バカぁ…。」
「久々知くん…。」
本音を打ち明けることに、今までのようなためらいはなかった。今伝えなきゃきっと伝わらない、そう思ったから。
「もっと俺にもさらけ出してくれよ!俺はもっと、あんたのいろんな姿見たいんだよ!!」
タカ丸さんの表情は驚いたものから、いつの間にか真剣なものとなっていた。
タカ丸さんは真剣な顔のまま俯き、しばらくの間、何やら考え込んでいたようだ。
が、次に顔をあげた瞬間、いたずらっ子のような笑顔を浮かべ、こう言ったのだった。
「じゃあ、ちょっと甘えさせてね!」
「へ!?」
間抜けな声を上げる俺をよそに、タカ丸さんは俺にしがみつき、ぎゅうっと抱きついてきた。そして、俺の肩口に顔をすりよせてきた。
「へ…ちょっと、タカ丸さ…」
驚きと恥ずかしさから、つい彼を引きはがそうとした。
が、
「…待って…。今、すっごい不細工な顔してるから、顔あげらんない。」
そんな声に、つい引きはがす手を弱めてしまった。
だってその声が、あまりにもよわよわしい涙声だったから。
「…タカ丸さん、顔、見せてください。」
「…ヤダ。」
「見せてくださいって言ってるでしょ!」
俺はそう言うと、強引にタカ丸さんの顔をあげさせた、タカ丸さんは抵抗したものの、力ではこちらが勝っているのだから、そんな抵抗無駄だった。
「…っぷっ!酷い顔ですよ!」
俺に無理やりあげさせられたタカ丸さんの顔は、目は充血して涙を垂れ流してるし、口元はプルプル震えてるし、鼻水は垂れてるし、酷い顔だった。
「だから見ないでって言ったでしょ!久々知くんのバカ!!」
そう叫んだタカ丸さんの様子があまりに情けなくて、俺は耐えきれないとばかりに、ケタケタ声をあげて笑いだした。
確かに酷い顔だけど、そんな顔もまた好きだなぁ、なんて思いながら。
「…こんなかっこ悪い姿見て、僕のこと嫌いになった?」
作品名:嗚咽を殺して泣く子供 作家名:knt