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separation

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【separation】


夜はいつも孤独をつれてくる。
一人でいることなど慣れていたはずなのに、いつのまにか誰かと過ごすという喜びを知ってしまった。
隣にいるどこかあどけなく見える横顔は戸惑う己の気持ちなどまるで見て見ぬふりをしているみたいに、静かな決意に満ちていた。
東洋人は若く見えるというが、彼は格別な気もした。
アーサーよりも実年齢はずっと上だというのに、一番若いはずの弟分のアルフレッドよりも若く見える。
小柄で華奢なせいかもしれないし、あまり年を感じさせない美しい黒髪のせいかもしれない。
アーサーが格別好きなのは、静かで穏やかな光をたたえたあの黒い瞳だ。
いつも見ている青や緑の瞳でなくて、まっすぐに自分を見つめてくるあの黒がいい。
そういうと彼は照れたように笑うのだったけれど。
でももうすぐで、その笑顔も見れなくなってしまう。
「…ねぇ、アーサーさん」
いつもと同じトーンのいつもと同じ落ち着いた優しい声。
その声で名前を呼ばれることが幸せだと思っていた。
「どれくらいこうしていたら満足するんでしょうかね、私たち」
縁側から見える夜に沈む日本の景色はそれでも美しかった。
彼の民族が移り変わる四季をこよなく愛するように、国自身である彼もまた季節を大切にしているのだろう。
綺麗に手入れされている庭は相変わらずに見事だ。
小さな池の水面に月が映っている。
「…さぁな」
「40年、でしたか?私たちの付き合いも」
「もうそんなになるのか…」
「いけませんね、こういう身分でいると時間の流れがどうも希薄で」
アーサーよりもずっと長い時間、それこそ気の遠くなるような時間の中を生きてきた彼の中で40年は確かに一瞬だったに違いない。
それでも慈しむべき時間だったはずだ。きっと。
「……もう、こうして会うことも難しくなるんでしょうね」
先日、日本は国際連盟を脱退した。事実上彼の国はアーサーの国と敵対関係にあたることになる。
こうしてお互いの国を行き来するのも、もうできなくなるだろう。
ヨーロッパと日本は遠い。その距離をまたつきつけられるのかと思うとアーサーはたまらなく辛かった。
「戦争になるんでしょうか」
「させないさ。止めてみせる」
「うちの上司はやる気満々みたいですけど」
「止めるのがお前の役目だろ?」
「……そうでしたね」
傍らにあった彼の白い手にそっと手を重ねる。
作品名:separation 作家名:湯の人