angel lamp2
夜。僕の部屋の前までくると、彼女は立ち止って、
「今度子供達が来たら、これを返してあげて」
そう言って差し出したのは、紙で出来たお面。
目と口が、三日月形に切り抜かれていた。
「これは・・・」
「書斎の窓の下に落ちていたの。子供達が落して行ったものだと思うから」
僕が見たのは、これだったのか。
子供が考えそうな悪戯だ。
「分かりました」
彼女からお面を受け取る。
「もう来ないかもしれないけど・・・念の為に」
悲しげに微笑む彼女の顔を見て、一瞬、お面を破り捨てたい衝動に駆られた。
「どうしたの?」
「いえ・・・何でもありません。ミズチは、結局どうなったのですか?」
「水槽から出たら、あまり長く活動出来ないの。契約切れで、元の世界に戻ったわ」
「そうですか」
もう少し、何か言おうと思ったけれど、何も思いつかない。
仕方なく、ノブに手を掛け、
「お休みなさい」
そう言って、部屋の扉を開けた僕の背中に、
「お休みなさい、カイト。良い夢を」
彼女の、囁き声が聞こえた。
・・・夢、か。
お面を棚の引出しに放り込むと、ベッドに横たわる。
僕は、眠ることが出来ない。だから、夢を見たことがない。
でも、彼女なら。
彼女になら、僕が夢を見られるように、出来るだろうか。
僕の体を、歌う為に作られた人形の体を、人のように作り変えられるだろうか。
そうなったら、マスターは、僕を手元に置いてくれるかもしれない。
ベッドから身を起こすと、窓にかかっているカーテンを開けた。
月明かりが差し込み、部屋の中を柔らかく照らす。
マスター・・・。
もう、お休みになっているのでしょうか。
それとも、遅くまで研究を続けているのでしょうか。
会いたい。
もう一度、あなたに会いたい。
僕のマスター。
作品名:angel lamp2 作家名:シャオ