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そーゆートコ

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銀時は居間の畳にあぐらをかき、机に置いた銚子を持ちあげ猪口にかたむけた。
秋の夜長だ。
それを、酒をちびちび呑みながら、すごしている。
「……来ていたのか」
声をかけられた。
桂が廊下に立っている。
ここは、桂が潜伏先として借りている家だ。
銀時は合鍵を持っているので、訪ねたときには桂は留守だったが、勝手に戸を開けて入ったのだった。
ほろ酔いの眼で桂の全身を眺める。
「おめーさァ、また変なカッコしてんなァ」
桂はポロシャツに膝上丈のスカート、前掛け、膝下までの少し長めのソックス、髪はうしろでひとつに結って、さらに三角巾を巻いている。
「変な格好ではない、家政婦だ」
そう告げた唇には、濃い口紅がわざと野暮ったく見えるようにひかれている。
「松平のおっさんの屋敷に入りこんでんだろ?」
一週間まえから桂は警察庁長官の松平片栗虎の屋敷に家政婦として潜入している。
失脚させることができるようなスキャンダルをつかむために。
「にしたって、そのカッコのまま、この家まで帰ってきたのかよ」
「見事な変装だろうが」
「返って目立つって」
「目立っても、指名手配犯とバレなければいい」
「ふだん、特に変装もしねェで、道を歩いてるじゃねーか」
そう銀時が言い返すと、桂は黙った。
少しして。
「……着替えてくる」
桂は去っていった。
ふたたび銀時はひとりになり、猪口に口をつけた。
熱燗だったのが今では冷やになっている。
それでも気分は良い。
酔っているのと、一週間ぶりに会えたから。
今夜は帰ってくるという確信はなかったが、それでも来て、良かった。
だが、それにしても、あの格好。
桂の変装はこれまでいろいろと見てきたが、また意表を突かれてしまった。
思い出して、おかしくて、つい頬がゆるむ。
作品名:そーゆートコ 作家名:hujio