そーゆートコ
「なにをニヤニヤ笑っているんだ」
とがめられた。
そちらのほうに眼をやる。
桂が廊下から居間へと入ってきた。
そして、銀時が座っているまえにある机の辺と直角を描いている辺のそばに、桂は腰をおろした。
いつものように正座している。
格好も平常のものだ。
きものを着て、長い黒髪はおろされている。
化粧はおとされていて素顔である。
素顔のほうが、さっきの化粧していた顔より、綺麗だ。
つい、その顔をじっと見る。
けれども、桂は銀時のほうを見ない。
そして、机の上になにかを置いた。
箱だ。
リボンかかけられている。
「なんだ、ソレ」
銀時は聞いた。
しかし、それでも桂は銀時を見ないままでいる。その眼は机の上の箱に向けられている。
「……松平には娘がいる」
桂は話し始めた。
「明日、娘の誕生会が大江戸ヒルズで開かれる。その誕生会に俺も招待された」
「へえ」
「これは松平から預かった。明日、娘に渡してくれと言われた。自分なんぞが渡すよりも、俺が渡したほうがよっぽど喜ぶだろうってな」
その顔は硬く、表情は浮かんでいない。
「松平の娘はいいかげん父親に正面を向いてほしいと願っている。だから、俺はそれを松平に伝えた。すると、松平は言った。いくつになっても一番大事な娘のまえでは、ろくに眼も見られない、ろくに口もきけない、うぶなガキになってしまうものだと」
「……へえ」
「そのあと、プレゼントを頼むと言って去っていった」
桂は口を閉ざした。
黙りこんだ。
思い悩んでいるようにも、見える。