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spirale 1

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彼は怯えてしまうのか、それとも安心してくれるのか
不安で、顔を上げることができなかった

いつもなら強気で、あとで後悔してしまうほど強気にものを言えるのに
こういう大事な時に働かない無能な自分の唇を噛み締める


「寝れなかったの…?」


ああ、なんで優しいんだろう
さっきまで泣いていた癖に、自分の事を気に掛けて、優しく言葉を紡いでくれる
けれど顔を上げることができない
怖がっているだろうきっと彼は

(どうして怖がられるのが嫌なんだろう)

自分でも解らない感情
戦いになれば相手を恐怖で押しつぶすのが普通なのに
彼にだけは嫌われたくない。怖がられたくない。避けられたくない
怯えた表情を向けられる度に、心臓がきゅっとしまって泣きたくなる
普段彼を見かけた時の、きゅぅってなる感じとは少し違う。この感情は一体なんなのだろうか


「神聖ローマ?」


さっきとは違うはっきりとした声で、名前を呼ばれる
視線が向けられているのがわかった
どうしていいのか、どう答えていいのか、いつもならすぐ言葉が出てくるのに
この日、このときだけは正常に頭が動かない


「お、れは……」


(何を言うつもりなんだろうか俺は)
(別れの言葉?)(それとも……)


ぐるぐると頭の中で言葉が巡る
イタリアが不安げに、次の言葉を待っている。そんな気がした
きゅっと洋服の裾を小さな手で掴んで
少し震えているのはここが寒いからなのか、自分が怖いからなのか、わからない


居ても立ってもいられない
踵を返して、逃げるように走った自分の身体に、頭で後悔した



「しんせい、ろーま?」


(小さく、小さく呼ばれたその名前)
(きっと、明日からもう聞けない)
作品名:spirale 1 作家名:紗和