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言い訳は疲労

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その日、平和島静雄は疲れていた。
というよりも精神的に参っていた。

静雄と上司である田中トム、最近できた後輩のヴァローナたちのもとには先週から面倒な仕事が立て続いて入ってきていた。取り立てる相手はカプセルホテルやネットカフェを渡り歩いて身を隠し、静雄たちから逃げようとする人物ばかりだったのだ。見つけてしまえばどうとでも金を巻き上げることはできる。だが当の相手が捕まらなくては話にならず、この一週間静雄たちは街中探しまわっていた。
夜に活動する者もおり、おかげで静雄は朝に家に帰って寝て夕方から仕事を始める昼夜逆転の生活が続いている。

しかし仕事自体は静雄にとって問題ではなかった。
今静雄を追いつめているのは、彼が溺愛してやまない年下の恋人、竜ヶ峰帝人に半月以上会っていないことである。
付き合い始めてからこれほど会わなかったことはない。それが静雄にストレスを与え、苛立たせていた。
煙草の量も増えた。キレるまでにかかる時間も次第に短くなって行き、当然キレる回数もそれにより破壊される物の数も増えた。


(あー、くそっ、帝人の奴と最後に会ってから何日経ったけな・・・。勉強に集中したいから会わないって、いくらなんでもひでえだろ? そういう真面目なところもあいつらしくて好きだけどよ・・・、でももっと俺にかまってくれたっていいじゃねえか。ちょっと手を出したらすぐ怒るし・・・、まあ怒った顔もすっげーかわいかったけどな・・・)

そんな文句なんだか惚気なんだかわからないことを静雄は公園のベンチに座り、日が傾いて赤みが増した空を見上げながら思っていた。トムとヴァローナとは先程別れたばかりで、今は静雄一人でいる。
自分から帝人に連絡を取ろうとしなかった。もし声を聞いてしまえば、仕事や帝人の都合など考えないですぐにでも会いに行ってしまうだろうからだ。我慢弱い自分の性格は静雄自身よく理解している。せっかく今まで自制して帝人のものに行かなかったのに、なにかちょっとしたきっかけで簡単にその自制も解けてしまうだろう。なのでメールだってしていない。

しかしそれも今日で終わりだ。今日ようやく金をすべて回収し、言い渡されたノルマを達成したのだ。
久々に夜まともに寝られそうであったが、すぐに自宅には帰りはしなかった。この時刻であれば、授業を終えた帝人がここを通るかもしれないし、もしここで会えなくても帝人のアパートに行くつもりだった。

(いっそのこと俺んとこに住んじまえばいいのによ、そしたら今よりもずっと一緒にいられるし毎日顔も見れんのに。それに生活費だって俺が払ってやればあいつだって金のこと困らなくてすむだろ、なのにいつも断るんだよな・・・。そこまで甘えられないって言い張ってるけど、でも他に理由があるんじゃ・・・? あんなにボロいアパートより絶対に俺の部屋の方が住みやすいだろ・・・。もしかして俺と住むのが嫌なのか? 妙にあのアパートに愛着持ってるみたいだし、まさか俺よりもアパートの方が・・・!?)

平和島静雄は疲れていた。
いくら人外の身体を持っていようとも精神面はただの悩める一人の男であり、また恋人に会えないという負担は多大なものであったのだ・・・。

◇◆◇◆◇

そんなまともな精神状態でない二人が、久しぶりに再会した。まだ人気の残る夕暮れの公園で。

「静雄さん!!! 僕と標識、どっちが大切なんですか!!?」

「そっちこそ俺とアパートのどっちが大事なんだ!!!」

そしてこの第一声である。
普段の帝人であれば公園で大声を上げるような人目につく行動など決してしない。しかし、非常に残念なことに今の彼は普段の彼ではなかった。そして静雄も。
周りの視線が自分たちに集中することなどお構いなしに舌戦を始める。初めは何事かと驚いていた周りもその内容のカオスっぷりについて行くことができない状態だ。当の本人たちも、ちゃんと相手が言っていることを理解しているのかどうかすら謎である。

「静雄さんのバカッ、イケメン!!!」

しまいには罵倒にもなっていない捨て台詞を残し帝人は走り去って行った。それを静雄も追いかけていく。
あらゆる意味でその場に取り残された者たちは、今起こったことが一体何だったのか判断しかね、ただ茫然と二人を見送るだけであった。


◇◆◇◆◇

「なにやってんだあいつら・・・」
「あの二人の様子、会話の内容から察するに、痴情のもつれによる修羅場であると推測します。しかし先輩が何故あのような状態に陥ったのかは不明です」

公園での騒ぎを聞いて、静雄がまた暴れているのではないかとトムとヴァローナは戻ってきていた。しかし、確かに静雄は騒ぎの原因ではあったのだが、その内容が予想外すぎる。騒動の中心の二人からある程度離れた場所で見守りつつ、トムは呆れてため息をついた。

「要は犬も食わない痴話喧嘩だな、ありゃ」
「なるほど、あれが公然と愛を育みその様子をわざわざ他者に見せつけ、突出して一人身である人物の不快感を煽ることで有名な『ばかっぷる』という存在なのですね。では私にはここで『リア充爆発しろ』という言葉を発する義務が生じたと解釈します」
「・・・だからその知識はどこで拾ってくるんだ?」

常識外れの部下二人に、本気で彼らの将来について思い悩むトムであった。
作品名:言い訳は疲労 作家名:千華