二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

INDEX|1ページ/3ページ|

次のページ
 
‐骸‐

 冬の足音が聞こえ始めて、この街でも、夜ともなれば刺すような寒さを感じるようになった。まして人の気配も明かりもない路地裏ならなおのこと。
 冷えた指で煙草に火をつけ、肺の奥ふかくにまで煙を行き渡らせると、少しだけ冷静さを取り戻したような心もちになる。薬物など殆ど効かない自分の身体では、喫煙の恩恵に与れることなどないのだが、習慣とは恐ろしいものである。
 少し冷えた頭で考える。どうしてこうなった?
 誰も彼もが俺の周りから消えた。それはゆっくりと、それでも確実に進行していった。勿論、最初は気のせいだ、勘違いだなんて言い聞かせていたが、遂に弟の幽まで一切連絡がつかなくなるに至ってようやく、事態の異常さに向き合わざるを得なくなった。
 消えた、といっても彼らが実際に消えた訳ではない。消えたのは、何だか形容し難いが・・・・俺と彼らの関係性とでも言えばいいだろうか。とにかく彼らはちゃんと生きているし、監禁されているわけでもない。ただ、あくまでも俺と無関係に振る舞うのだ。拒絶の意志さえ見せず最初から何も無かったように俺を見るその目は、俺をどん底に叩き込むのに充分だった。
 気づけば随分短くなっていた煙草の火を靴で揉み消し、新しい一本を取りだす。ゆっくりと煙を吐き出しながら、もう一度問いかける。どうしてこうなった?
 今更離れていくような奴らじゃなかった筈だ。ということは、裏で糸を引いている奴がいる。おそらく、嫌いで嫌いでしょうがない、あの男だ。
 その顔を思い浮かべるだけで、ぴく、とこめかみに血管が浮くのを感じる。とことんまで俺の邪魔をしたいらしい。会いたくない。顔も見たくない。それは互いに同じ筈なのに、あの男はいつだって俺の前に現われては、あの嫌な笑みを浮かべるのだ。不快、不快、不快。
 そしてまさに、その男の『におい』が、この路地には充満していた。違えることのないこの気配、におい。
 ひと際強くなったその『におい』の方へ視線を向ける。視線の先には、いつもと同じ、薄気味悪い笑顔を張り付かせたあの男が立っていた。
 煙草を足元に投げ捨て、先程よりもずっとずっと力強く靴で踏み潰す。それは始まりの合図。

 「こんばんは、シズちゃん」
 「よォ、臨也ぁ・・・・」

作品名: 作家名:柳田吟