不器用ブルース
「静雄さん、さようなら」
僕は池袋の街を離れる覚悟をした。もう、静雄さんに会うことはないだろう。
「初恋は実らないものだよな」
溜息が零れる。静雄さんに関わったら、僕はおかしくなる。静雄さんにこれ以上嫌われる前に、僕は卑怯だから、逃げる。
「さようなら」
池袋の街を歩く。今日で全て終わるから…終わらせるから。
「竜ヶ峰?」
「あ」
なんてことだろう。
目前にはバーテン服の愛しき彼。
「静雄さん」
「俺は面見せるなと言ったはずだ「大丈夫です。今日で最後ですから」
「は?」
「僕、地元のに帰りますので」
「…本気か」
「ええ、だから平和島さん、さようなら」
僕は笑えているのかな。笑えているよね。
「それじゃあ」
僕は静雄さんから視線を逸らし、歩き出した。
「りゅ、行くな」
歩き出したが、静雄さんに腕を引かれ静雄さんの胸に顔がぶつかる。
思わず、静雄さんから距離を取ろうとしたが、静雄さんは僕を自由にはしてくれない。
「へ、平和島さ」
「行くなよ」
静雄さんは僕の首に顔を埋め、呟いた。
「何を言って…」
「竜ヶ峰が居なくなるなんて」
静雄さんは何を言って、
「だって、静雄さんが顔見せるなって言うから、僕は」
「…見れないんだよ」
「え?」
「竜ヶ峰のことが好きだから、お前の顔が恥ずかしくて見れねぇ」
「嘘」
静雄さんが僕を?
「臨也さんが好きなんじゃ」
「…そんな訳ないだろう。蚤蟲の存在のおかげで竜ヶ峰と普通に話せるがな」
じゃあ、僕の勘違い?
「なぁ、行くなよ。俺の傍から、居なくなるな」
「はい!」
これは僕の静雄さんのすれ違い両思いの物語。
end