双方向インプリンティング【僕にとっての貴方】
竜ヶ峰帝人にとって折原臨也は遠い親戚であり年の離れた兄のような存在だ。
親戚が集まる席で臨也と出会ったのは帝人が物心つく前、そう聞いている。臨也は折に触れ「帝人君こんなにちっちゃくて」と手のひらサイズで帝人の体格を話すがそんなはずがない。
気がついたらあの席でいつも優しくしてくれる存在。どんな時間を積み重ねたのか帝人にはほとんど記憶がない。空気みたいに臨也のことを感じていた。
人の死が絡むことが多い席だが臨也がいれば淋しくないし彼の双子の姉妹は空気を読まずに賑やかで帝人は何だかんだ言って好きだ。
両親の海外出張について行ったりと一つ下の彼女たちに会うことは少なかったがそれでも縁とは不思議なもので繋がりは今もなお切れていない。
特に臨也とはネットを覚えてからほぼ毎日チャットなりで連絡をとるようになった。
連絡が取りづらくなる時は前もって教えてくれるし、臨也のチャットは他にも人がいる。
個人的に、というほどの仲でもないのだが「甘楽」と名乗るたぶん女性とはメールでのやりとりもしている。
『もう引っ越しの準備はしましたか? 面倒くさがって後回しにしちゃダメですよ? それと池袋でわからないことは何でも聞いて下さいね☆ 誰かさんたちと違って私は太郎さんの味方ですから! いくらでも頼って下さい!!』
なんとも心強い言葉に帝人は新生活への不安が薄れる。
臨也の直接の知り合いなのかネット上で仲良くなっただけなのかは知らないがあのチャットメンバーは帝人に親切で他には少しだけ皮肉気だったり辛辣だったり。
チャットのメンバーは臨也はイザヤとそのまま名乗り、他は甘楽とクロムがいる。帝人はそこで田中太郎と名乗って混じっている。
甘楽に誘われていったチャットでセットンというメンバーと三人で会話もすることもあるがそちらは池袋の街が主な話題で、臨也を含めてしているチャットは普通にまったりとした日常会話である。
それでも面白いことやおかしいことに事欠かないのは街のせいかチャットのメンバーが優しいからか、池袋に住んでいない帝人には判断ができない。
(楽しみだなあ)
折原臨也が呟いたことを竜ヶ峰帝人もまた思う。
作品名:双方向インプリンティング【僕にとっての貴方】 作家名:浬@