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俺の弟がこんなに可愛いわけがない【俺妹性転換】

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パンっという自分の頬を叩かれる音で目覚めるのはこれで何度目になるだろう。
真っ暗な部屋の中で感じる重みにも覚えがある。っていうか、俺の部屋の勝手に侵入して、人が寝てる所遠慮なく乗っかってきて、あまつさえビンタで起こすやつなんて他にいない。
「桐也、お前なあ・・・」
俺が呆れたようにして言うと、それ以上に呆れた様子を見せる桐也が自分を見下すような視線でこちらを見ていた。
「目が覚めたんなら、さっさと起きろよ」
いい加減人をビンタで起こすのはやめろとか、そもそも夜中に人の部屋にノックもなしに入ってくるなとか言いたかったが、うるさい、死ねの一言でなかったことにされるだろうと俺はなんとかすべてを飲み込んで腹に収める。
そもそも弟と俺は、口もきかないような間柄だった。というかわかりやすく言うと無視されてた。
まあ今でもこんな扱いをされているわけだから偉そうに言えることではないが、それでも以前の蔑まれるような態度よりはマシになった・・・と思いたい。
そのきっかけは、こいつがずっと隠していた趣味だ。
弟の桐也は、どこぞのアイドルグループにいてもおかしくないくらいの可愛い顔をしてるだけでなく、成績優秀、おまけにスポーツ万能で陸上部のエースという肩書きまで持つ、まさに非の打ち所のないどこに出しても恥ずかしくないスペックの持ち主だった。
そんな弟が、どういうわけかボーイズラブという男同士の恋愛を描いたマンガや小説、さらにはゲームを愛し、集めまくっていたのだ。そのことを偶然知ってしまった俺に、弟は人生相談と称して面倒ごとを持ち込むようになった。
くそ、今何時だよ。
俺は眠い目を擦り、まどろんだままの頭をなんとか働かせようと起き上がる。桐也は相変わらずこっちを見たままだ。
「それで、何なんだよこんな夜中に」
「じ・・・人生相談だよ、いつもの」
人生相談・・・ね。こいつ、それさえ言えば何でも許される魔法の呪文とでも思ってるんじゃないだろうな。言い返したいことは山ほどあるが、ここでそれを言って事態が好転した試しがない。俺は仕方なくため息をつくことですべてをあきらめた。
「それで、今度は一体なんだよ。お前が貸してくれたゲームなら、まだ途中だぞ」
「はあ?!貸したの何日前だと思ってんだよ。せめて一人くらいは攻略してて当然だろ?寧ろどうやったらそんなに時間かかるのかわっかんねーよ!」
何故俺は、弟からこんな軽蔑のまなざしで見られなきゃならんのだ。
「あのなあ!いきなりああいうゲームやれって言われたって、色々心の準備とか、覚悟とかあるだろうが!」
「・・・・・なんだよ。色々言ってたけど、やっぱり馬鹿にしてんじゃん。キモいとか思ってんじゃんか」
おいおい、なんだその俺を責めるような目つきは。お前、俺に対して今まで何度キモいって言ったよ!それを俺がいきなり、男と男がその・・・色々する18禁ゲームにちょっと時間がかかったからってそこまで責められる覚えはねーぞ。しかもよりにもよって、兄と恋仲になるゲームなんて、どんな気持ちでプレイすればいいんだよ。そもそも世の中あんなスペック高い兄貴はなかなかいねーぞ。
桐也は顔を伏せて、ぎゅっと布団を握っている。いつも態度でかいくせに、こういう時に限って傷ついたみたいなその態度はよせ。まるで俺が悪いみたいじゃねーか。
「いや、だからな。・・・攻略の仕方もよくわかってないし、ノウハウみたいなのもないから、ちょっと時間かかってるだけだよ。別に馬鹿にしてるとか、キモいっていうんじゃないから。な?」
俺は桐也をなだめるように、出来るだけ優しく言ってやる。桐也はゆっくり顔をあげ、俺の様子を伺うように上目遣いでこちらを見てくる。くそ、わかってたことだけど、こいつ本当に顔だけはいいな。
「それ、本当に本当?」
ったく疑り深い奴だな。まさか、夜中にそんなこと確認するために起こしたんじゃないだろうな。
「本当だよ。だからちょっと待ってろ」
「わかった。じゃあ、明日まで待つ」
・・・・・・結局、俺に与えられた猶予は一日だけだった。操作に慣れてないって話、こいつ本当に理解してんのかよ。まあ、実際のとこ理由はそれだけじゃないけど。
「で、話はそれだけか?」
「・・・ち、違う。人生相談だって言っただろ。何聞いてたんだよ」
怒っていい。夜中にビンタで起こされて、しかも押し付けられたゲームをやってないって説教されて、おまけに話がそれたのはどう考えてもこいつのせいだってのに、この言い草はないだろう。さあ、怒るんだ。がつんと言ってやれ、俺!
「・・・なんの相談でしょうか」
負けたわけじゃない。これ以上事態をややこしくしないために、俺は大人になったんだ。
「その・・・、じ、実際どうなのか知りたいんだよ」
「知りたい?何が?」
「だ・・・だから、その」
言いよどむ桐也の言葉は要領を得ないし、顔を赤くしたりしている。いつもの言いたい放題のこいつにしたら、ずいぶん珍しい。
「なんだ、はっきり言えよ。今更何聞いたって驚きゃしないから」
「…男同士ってどんな感じなのかなって」
「・・・・・・・は?」
今、こいつは何を言った?処理しきれない情報が頭の中でぐるぐる回り、背中には嫌な汗がじっとりと俺のパジャマを濡らす。
「しゃ、社会勉強っていうか」
待て待て待て。そ、そんな勉強をしなきゃいけない社会はいつの間に出来たんだ。どうなってるんだ!
「お、お前、二次元と三次元一緒にするなって言ってただろうが!」
「そ、そんなこと言った?と・も・か・く、そういうわけだから」
「どういうわけだ!色々乱暴すぎるだろ。もうちょっと説明しろよ」
「だから、兄貴としてみたいって言ってんじゃんかよ!」
夜中に、大声で弟に誘われました。
っていうか、今の下で寝てる両親に聞かれてないだろうな。
「ちょ、ちょっと落ち着け。まず声を落とせ。いいか、深呼吸しろ」
そう言って、俺もどうにかなりそうな心臓を落ち着けるために深呼吸する。これフラグなのか?というか、俺はそんなルートをプレイした覚えはない。なんだってこんなことになってるんだ。
「落ち着いたか?」
「俺は最初っから落ち着いてるし」
「・・・・・・じゃあ聞くけど、お前自分が何言ってるのかわかってるのかよ?」
「わかってるよ」
「わかってないだろ。大体、社会勉強って、そういうのでやることじゃないだろ。こういうのはだな、その、一応好きなもの同士っていうか」
なんで俺は今、弟にこんな恥ずかしいことを説明しなきゃいけないんだ。ふと我に返り、俺は頭を抱えるしかない。
「俺とじゃ、嫌なんだ」
「あぁ?」
「結局そういうことだろ。俺とじゃ嫌なんだ。わかった」
「わかったって・・・」
見れば、桐也は目に涙をためて、唇をかみ締めている。必死に涙をこぼさないように耐えてるみたいだった。全身を震わせて、肩を丸めて。
「誰か他の人探すから」
「ああ、そう・・・」
って、そうじゃねえだろ!
「待てよ」
俺はベッドから降りようとしてた桐也の白い手首をぎゅっと掴む。細くて、今にも折れそうだ。
「他の誰かって誰だよ」
「誰でもいいだろ。関係ないし」
「関係ないってなんだ。ないわけないだろ」
「だって俺とじゃ嫌なんだろ」