【腐】まず初めに
よかった・・・本当によかった・・・。くすくすと笑いつつ、相手は、焦げ茶色の柔らかい髪をすり付けてくる。甘い香りが鼻孔をくすぐるが、これは彼の身体から香ってくるようだ。
見た目よりも幼い行動は、意外にも凛とした容姿に不思議と似合っていて。
シグムンドは思わず(ーー可愛い)と思ってしまったのだ。
途端、頭の奥からぷっつりと、何かがはじけたような音が聞こえてきたような気がした。
今までやり場の無かった腕を、彼の腰に回し、ぐいと自分の方に引き寄せる。すると、相手ははっきりと見て取れるぐらい、びくりと体を振るわせた。
「や、やめ・・・」と、普段の勇姿からは想像が出来ない、か細く弱々しい声が聞こえてきたが。今のシグムンドには やめる が一体何を意味する言葉か分からなかった。
「離してくれ。誰かに見られたりでもしたら・・・」
フレイが胸の内で身体を捩っているが、シグムンドはその解放してやらないどころか、一層腕に力を込めたのだった。
「おい、私の言っていることが分からないのか!?」
フレイがなにやら叫んでいる。シグムンドは細い腰を指を使い上下に優しく撫でながら聞いているが、やはり意味が飲み込めなかった。
「何か言ったらどうなんだ、シグムンド!・・・いや、頼むから何か言ってくれ!怖いんだ・・・その、今のお前の顔が!」
相手の叫びは、鼓動の音によってかき消される。破裂しそうなぐらい脈打っている心臓は、神の物かそれとも人間の物なのか。もしかして、二人分のものが重なりあって一つに聞こえるのかもしれない。
しかし、心臓の音が重なって聞こえるぐらい隙間無くひっついていても、服越しの皮膚に感じるのは鎧の冷たい感触のみ。暖かみの無い防具は、フレイの操を守っているかのようだ。
ふとシグムンドは、鎧が邪魔だなと思った。
露出している肌でさえ、雪のように滑らかで白いのだ。それなら、鎧の下にはもっと素晴らしい物が隠されているに違いない、と。
思い立ったが吉日。
蛮族は早速、フレイの腰の鎧に手をかける。神が「おい、やめろ!」 と声を荒げた。
しかしシグムンドは、はっきりと耳に届いたのにも関わらず、無視をし、思い切り鎧を引っ張ったのだった。
「 シ グ ム ン ド ! ? 」
(とれない・・・。どこに留め具がついてるんだ?これ・・・)