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くらたななうみ
くらたななうみ
novelistID. 18113
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疑似天使たちが辿る顛末について

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日向がにこにこ笑っている。そしてそれは俺の席だ。

「あのときさ、セカンドフライをキャッチしていたら、俺は、消えていただろうな」

日向は言った。「消える」という現象の意味を、落ちてくるボールの真下で理解したのだと。太陽の光に重なって、ボールの軌跡がまるで、自分に吸い込まれてくるような感覚だった。ぽつり、ぽつり、漏らす。俺がまだ経験をしたことのない感覚だった。
仕組まれているように精密な瞬間で、且つ、自分はその瞬間を待ち望んでいたような。
しかし、

「でも、消えなかった」

へへ、と笑って、「昨日もそう」とまた笑って。

「そのこと自体に、意味はあったんじゃないか、と、思ってる――俺はまだ、消えない」

少しでも長く一緒にいたいなんていう結論の先延ばし措置的感情ではなくて、消えるときは一緒がいいなんていう単なる我が儘に近い陶酔でもない。

「今はまだ、その時じゃない」

それだけのこと。

「次の世界に生まれたら、その瞬間から音無をさがしてやんよ」

そもそも次の世界では自分は音無という姓ではなく、結弦という名でもないだろうに。僕は思った。
必ず。それは起こるだろう。落雷のような一瞬の、閃き。確信。
僕たちが再会を成し遂げることを。

「俺も、日向を探してやんよ」

応えた。