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血、さえ愛しい

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「僕を、大人にして下さい。」


未だかつてないほど真剣な顔で、どこか緊張した面持ちで、憎からず思っている相手にそう言われたら、
大抵の男は馬鹿な勘違いをすると学校で習わなかったのかい?君は。
ねぇ、帝人くん。

「・・・・・・・へ?」
頭の中で一通り充分に妄想してから俺は間抜けな音で返事をした。
だって帝人くんだ。その言葉通り取れば間違いなく後で痛い目を見るだろう。
その思考回路は計り知れない。
計算した行動や言動ならば対処も出来よう。
だけど、それは無理だ。彼は小悪魔なフリしたただの天然なのだから。

「やっぱり痛かったりするんでしょうか?僕、したことなくてわからないんですけど…。」
想像してるのか表情を僅かに曇らせて帝人くんは言う。
一体なんのことだか要領を得ない。
むしろ要領を得ようとして考えれば考えるほど俺の思考はアレな方向へ向かう。
心配しなくても俺ならハジメテでも全く痛みの無いようにシてあげることが出来るよ。
今なら大サービスしてあげる。いや、もう、帝人くんならほんといつでも。

「正臣はもう何度か経験あるらしくって、最初は痛いけどそのうち気持ちよくなるって言ってたんですけど…刺すのに気持ちいいってのも変ですよね。」
っ何言ってるの?いや、俺は紀田くんの恋愛事情なんざさっぱりだけどもね。
気持ちよくなるってか、気持ちよくしてあげるに決まってるでしょ、むしろ気持ちよさ以外の何者でもないっ、みたいな?
絶対ハマるって、まぁ俺がハメるんだけどね。あ、下品な言い方してごめん。
だけど挿すとか言う言葉がまさか帝人くんの口から出てくるとは、…それだけで俺の夜のオカズになりそうだから怖いよ。
気持ちよくなるのは変なことじゃないよ、俺の腕の中でこれでもかってほど乱れてアンアン啼いたら良いと思う。

さて、…冗談はここまでにしておいて。

「…帝人くん、何の話?」


「あ、すいません。僕ってば主語を抜いてました。『献血』のことです。」
・・・まぁ、そんなこったろうとは思ったけどね・・・。
これが全て天然のなせる技なんだからほんと『天然記念物、ミカド』の恐ろしいところだよ。
「ちなみに『大人に〜』ってのは?」
「最初正臣に一緒に行って欲しいって頼んだら『臨也さんに頼んだら?』って言われて…なんでも献血が出来るようになれば一人前だから『大人にしてくれ』って頼めば臨也さんもわかるだろうって…。」
…それ、信じちゃうんだね。
大丈夫かな、この子。臨也心配っ。

帝人くんの後ろにザマアミロと笑う紀田くんが見えるなぁ。紀田くんは俺と帝人くんの関係に反対だったしね。
まぁこの程度の悪戯屁でも無いよ。

そりゃぁ、…ちょっとは期待したりもしたけど?
だって『大人にしてくれ』とかさぁ。
俺と一緒に大人の階段上っちゃう?とか思ったし?…むしろ一段抜かしで駆けあがっちゃってもイイヨ。とか考えたけど。

・・・紀田正臣、KILL!!


「いつが良いの?」
「え?」
「献血、行くんでしょ?」
俺がそう言うと、帝人くんはパァッと表情を輝かせた。
うわ、満面の笑み。なんか俺浄化されそう…。
俺が眩しげに目を細めるのも気が付かず、帝人くんはにこにこと笑う。
「俺はいつでも良いですよ。臨也さんが空いてる日で。」
「…明後日とか?」土曜日だし、帝人くんも一日空いてるでしょ。
献血した後はそのまま二人でデートでもしようね。
「はい、じゃぁ明後日に。」
何がそんなに嬉しいのか帝人くんは頬を赤らめて喜ぶ。
可愛いね。可愛すぎるね。

…『大人に〜』発言が俺相手で本当に良かった。
万が一何かの間違いでシズちゃんにでも言ってごらんよ。
その場でパクリだよ。狼もびっくりな手の早さだからさ。
パクリされる帝人くんを想像しただけで俺の中でユラリとシズちゃんに対する殺意がわく。

「あ。」
俺がユラユラと殺意を覚えていると、突然帝人くんが思い出したように声をあげた。
「どうしたの?」
「…献血って何処でやるんですか?」

さっすが天然記念物!


「…病院じゃないんですね…。」
土曜日、帝人くんと二人で献血センターに行くと、帝人くんがキョロキョロと周りを見ながら言う。
「病院でも出来るとは思うけど、大抵の人は此処でやるでしょ。」
たいして献血に興味の無い俺はそう呟く。
考えてみれば俺も献血なんてこれが、たぶん、二回目だ。
俺が今よりもう少し若い頃の話だ。
街をフラフラ歩いていたらプレート持った係りの人が献血の呼びかけをしていて、そのときたまたまプレートに俺の血液型が『不足!』と赤文字で大きく書かれていた。
なんとなく自分が必要とされている気がして気まぐれに献血をしてみた。
こんな俺の血が役に立つのかと、偽善的な行動をする自分に笑えた。だから二度とすることなんてないだろうと思ってたのに。
帝人くんと一緒なら、顔も知らない誰かに血をやるのも悪くない。

問診票を書いて、待合室で待つ。
広いし、綺麗だし、パソコンもあるし、まぁ環境は悪くない。
確か飲み物とかも貰えるはずだ。
帝人くんは漫画の棚を物色している。
パソコンで遊びながら、俺は人間観察をした。
隣の肥えた男はアイドルの水着写真を見てるし、ソファに座る女は化粧に余念がない。
汗を拭く中年男に、いかにも献血が趣味ですみたいな偽善ぶった奴も居る。

・・・まぁ、これで人間が助かるんだから、価値のある行為だと思う。

そしてぼんやりと考えた。
俺の血が誰かの体内に入ることよりも、帝人くんの血が誰かに入ることが嫌だな。
帝人くんの体液は全て俺が貰いたい。
いっそ俺と帝人くんが指先からくっついてしまってそこに流れる血液全て共有してしまいたい。
俺が死ねば帝人くんが死んで、帝人くんが死ねば俺も死ぬ。
すごい、実に理想的だ。

無理だとわかってるけど。

作品名:血、さえ愛しい 作家名:阿古屋珠