【臨帝】SS【詰め合わせ】
※高校教師臨也×生徒帝人(教科は現代文。敢えての。)
大量の本と数台の机が並べられた部屋は雑然としていた。電気も灯さずカーテンは閉じられたまま。薄い布越しに夕焼けのいろが差し込みぼんやりとした影が2人分足下に伸びている。「…っ、ん、」「っふ、……、」吐息がくちびるのあいだから漏れると同時に塞がれる。いきができない。歳上の彼から鼻で呼吸すればいいなんて教えてもらったのはつい最近で、そんな器用にできるわけがない。でも、――はなれたくない。呼吸が乱れているのは知らないふりをして彼の首に両の腕を回す。そのままぎゅうと引き寄せる。かちゃん。固い音。「んっ、……ふぁ、あ…せんせ、」「…なに、」めがね。小さく呟く。開いた口端が零れたもので濡れたがそんなのは今更だ。硝子越しに紅と碧が交差する。「はずして、」もっとちかくにいかせて。終える前にくちびるは相手のそれで塞がれた。呼吸の合間に臨也の指がフレームにかかる。一気に剥ぎ取ろうとしたそれはけれど少し引っかかったようで小さい舌打ちが聞こえた。彼らしからぬ行動にすこし驚く。そしてそれを見れるのが自分だけであることに優越を感じるのだ。何度目か分からない口付けを交わし熱を分け合う。ぐに、と舌を押されて押し返せばさらに絡め取られて。歯列をなぞられるとどうしていいか分からないぐらい頭が、脳が、ぐちゃぐちゃになる。思わず指先に触れた布を手繰り寄せる。皺になるとか、帰る時に困るだとか、今は考えられなかった。ただ、近く。もっと近くに。手が、肌が、皮膚、が。すべてとけてしまえばいいのに。そうして融け合って、貴方とひとつになれたなら。このくるしみは、きえるのでしょうか。「またきみがほしくてたまらなくてそしてくるしくなるんだ」
きっと、そうだ。
作品名:【臨帝】SS【詰め合わせ】 作家名:志保