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踊る、ぬいぐるみ戦線

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まるで洪水のように、数限りなく沸いて出で来る化け物たちが片付いた と思われた、その瞬間。
些か間の抜けた電子音が機体から発せられると同時に、画面には明滅する
『 Congratulations! All Stage Cleard! 』の文字が躍った。

「すごいです兄さま! 今の、新記録みたいですよ! 」

―ここは学園へと続く界隈に在る、とあるゲームセンター。
建物内の最奥に設置されたガンシューティングゲームの筐体の前には2人の、兄妹の姿があった。

・・・・・・それは今現在稼動している射撃ものの機体の中でも、特に『史上最凶の無理ゲー』とうたわれ、
プレイする者の心を次々にへし折ってきた、正に鬼のようなゲーム・・・・・・なのだが。
筐体を前にし、銃を手にした青年は涼しい顔で この程度で、か とぼそりと呟く。

その横顔は凛々しく、切りった峰々を窺わせ
双眸は透き通った湖水を思わせる― その名も、スイス。
淡い金色の髪を揺らし、彼は傍らの妹を見やる。

「先程の者はもう終えたようである、行くぞリヒテン」

「はい、お兄さま」

至極当然の如く、差し出された兄の手を
また何の逡巡もなく彼女は取り、2人はその場を後にした。兄とお揃いの髪型に、紺碧のリボンが踊る。

・・・・・・残されたのはハイスコアを叩き出したプレイヤーネームを求めるゲーム画面と、各々の筐体の陰から
伝説達成の瞬間を目撃し、ざわめくギャラリーたちのみであった。

このゲームセンター。特に大きい訳ではないが、何しろ校区内では一番の近場とあって
主に学生たちに利用されることが多い。 ・・・・・・中には登下校の際に立ち寄る不謹慎な者もいない訳ではなく、そんな輩を厳しく取り締まるのが風紀委員長でもあるスイスなのだがその彼が何故、このような場所にいるのかというと。


作品名:踊る、ぬいぐるみ戦線 作家名:イヒ