理解不能の攻防
よくわからないが、ラビはぼんやりと正面を見たまま歩き続けるので、神田もそれ以上なにも言わず、ただただ歩いた。やがてとなりの存在を忘れ、教団に帰ったらソバを食うソバをという思いだけにとらわれる頃、となりを歩いていたラビが唐突に声をあげた。
「死にたいわけないけど、俺がもし死んだとして、次の『ラビ』がまた生まれるだけさ」
「……」
「いてもいないようなものは、カウントすべきじゃない。ノーカウントで、バッターアウト」
また意味不明なたとえが出てきたが、たとえ話があってもなくてもラビの言わんとしてることがやはり神田にはわからなかった。
「テメエが死んだら、また別のブックマンが教団に入るってことか?」
「あ?そんな話した?じゃなくて、うーん、次は教団の敵側かもしんないさ」
「意味がわからん」
「ユウが理解不能だとおもう話を俺がしてる時は俺がもうどうだっていいやって思ってるときさ」
それならラビは実に四六時中もうどうだっていいやって思ってるということになる。つまり神田と出会ってから今迄、ずっと。