鏡
「いいから・・・な?似合うだろ?」
言われて、渋々とまた玲治が鏡を見る。
今度は、自分の身体をなるべく見ないように、自分の左耳に当てられたピアスを見るように。
そして・・・玲治は唐突に気付いた。
何故、ダンテのこの奇行のわけを。
「ん?やっぱだめか?」
思った反応がないことに、ダンテが口をへの字に曲げると、そのダンテの隣で玲治はにやりと笑った。
「ってかさ。俺、大体ピアスの穴ないし」
言うと、ダンテは一瞬ぽかんとし、それからぱちんと手を額に当てた。
そして、また踵を返そうとする。
しかし、今度は。
「少年?」
ダンテの服の裾を、玲治が掴んでいる。
そして、手を出し、先ほどのピアスを渡せと催促する。
何をするのかと思いながら、ダンテがそれを玲治の手のひらに落とす。
すると、玲治はストッパーから針を抜き、自分の耳たぶにあて、ダンテが止める前に、いっきに自分の耳たぶをそれで貫いた。
一瞬、眉を潜めた玲治だが、すぐに平気な顔に戻り、ストッパーを何度か失敗しながらつけた。
「無茶だな・・・」
呆れたように言うダンテに、玲治はにやりと笑った。
「こんなん体力の1もへらねぇよ」
そして、鏡に向き直り、自分の姿を見る。
耳たぶには赤い宝石から流れたような一筋の血が流れていたが、それを差し引いても、かなり似合っていると玲治は思った。
鏡の中のダンテに、どうだというように視線を送ると、こくりと頷く。
そして、
「これで、鏡も見れるだろう?」
と言う。玲治はそのダンテを鏡ごしに見やり、苦笑した。
「そのセリフ、言わないほうがスマートだったよ」
玲治の言葉に、悪魔狩りは片方の眉を器用に上げ、それから苦笑した。