お誘い
/************前の話とは繋がってない************/
アリスはノックもせず、俺の部屋の扉を開けた。
満面の笑みで、手に雑誌を持って。
そして、一歩を踏み入れると、嫌な顔をした。
「うわ、煙草くっさ!」
言って、俺への挨拶もなしに俺の前を横切り、部屋をつっきると向かいの窓をあけはなった。
そして、ふはーっとかいいながら外に向って伸びをした。
それで、おちついたらしい彼は窓に向って胡坐をかいて、窓の桟に手をついた。
そのまま鼻息でも歌いだしそうな様子で、窓の外を見続ける・・・・。
こいつ・・・絶対当初の用事を忘れてやがる・・・・。
俺は傍にあったハードカバーの本を思い切り彼の頭に投げた。
それは狙い通り彼の頭にゴツリとあたり、彼の頭がカックンと前に傾く。
「よし。」
「よし。やない!痛いやないか!!!!」
頭を抑え、アリスが振り返る。
「で、何のようだ?アリス」
まだ何か言いたそうなアリスを制し、そう聞くと、アリスは一瞬ぽかんとした顔をした後、そうだと、持ってきた雑誌をめくりだした。
どうやら、男性ファッション誌らしいというのが遠目にも分かるそれをペラペラをめくり、やがてモノクロのページを開いて俺に見せた。
それは、占いのページで、1月から12月生まれの運勢が書いてある。
そして、にこにこと笑いながら俺にそれを突き出す。
「みてみぃ、君の誕生日んとこ!」
俺の目の前に広げられたそれ・・・運勢なんて興味ないんだよ・・・っと思いつつ、俺は自分の誕生月である4月のところを見た。
そこには・・・白い星が5つ並んでいる。
そして、その下には・・・
「恋愛運・・・凶!金運・・・凶!勉強運・・・凶!健康運・・・凶!!!どうやーーーー!」
っとアリスは俺が読む前に、それを大声で言って笑い出した。
愉快痛快といったかんじの馬鹿笑い。
俺が悔しがるとでも思っているのか?
そんなものを、俺が気にするわけないだろう・・・・?
いや、そもそも・・・
「お前も四月生まれじゃないか。」
指摘すると、笑顔と笑い声がぴたっと止まり、がっくりと肩を落とした。
「そうなんや・・・・・気付いた時・・・・君を思いっきり馬鹿にしたろうとおもったのに・・・・・」
「お前が馬鹿だったというわけか」
「そうや!・・・ってちゃうわ!・・・って・・・そうか・・・・」
一旦は、思いっきり顔を上げた、アリスだったが、すぐに声の調子は下降し、ついでに顔も床を向いてしまった。背中によどんだ空気を背負っているアリスは・・・結構、鬱陶しい。
「・・・・で・・・慰めろとかいうのか?」
とりあえず聞くと、彼は黙ってまたその雑誌を俺に差し出した。
よく分からないままにそれを受け取り、もう一度その文章を読む。
そこのは、10年に1度あるかないかの大厄月とかいてある。
やることなすこと全然だめだっということがつらつらとかかれ、最後に、乗り切るためのラッキーアイテムというやつが書かれていた。
ラッキーナンバーは3、色はペールピンク(なんだそれは)、それと・・・
俺はそれを見て、大きくため息をついた。
すると、アリスの肩がぴくりと反応した。
俺は、煙草を咥え直し、煙を肺にいっぱいにすると、アリスの頭に吹き付けた。
ケホケホっとやりながらもアリスは顔を上げない。
文句も言わない。
仕方がないので、俺は、アリスの待っているであろう言葉を言ってやった。
つまり・・・
「・・・なんで、お前は素直に、親子丼が喰いたいっていわないんだ?」