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僕のmonster Ⅱ

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覚悟



好きか嫌いかと言われたら好きですよ?
子供の頃は可愛かったし、大人になった彼は存外好みだったし。
あ、でももうちょっと渋さが欲しいかも。
・・・・真面目に考えろって?
うーん、真面目に考えたら、それはそれでややこしくなると思うんですよ。
僕は吸血鬼で、彼は力がちょっとてかかなり強いけども、ただの人間。
しかも子供の頃も知っている。
そんな子を僕の眷属にするのは意外と勇気と覚悟がいるんです。
重くて、苦くて、ちょっと怖いそんな覚悟が。
というかぶっちゃけると、僕は長く時を重ねてますが、自分のパートナーは創ったことないんですよね。
・・・意外ですか?
だって創る必要が無かったんです。
元々僕という存在が確立された時にはすでに独りでしたし、仲間意識の強くない種族ですから、吸血鬼は。
それなりの関係にあった人間もいましたけど、その人はちゃんと人間としての生を全うしましたよ。
だから余計足踏みしちゃうんです。
・・・彼の気持ち?
ああ、よくわかりますよ。困ったことに。
だってねぇ、あんな目で見られたら誰だって気付きますよ。
痛いやら、熱っぽいやら、むず痒いやら。
あのちっちゃくて可愛かった子供がですよ?
いわゆるギャップ萌え?・・・って違うか。
ほんと、あんな目で見られたのって何十年ぶりだったか。
人間の成長って怖いです。
っと、話がずれましたけど、まあとりあえず僕は真面目に考えると怖くて逃げだしたくなるっていうのが本音です。
逃げたら静雄さんは怒って今度こそ嫌いになって忘れてくれるかもしれませんね。
・・・・ふふ、冗談ですよ。
でも、そうですね、これ以上静雄さんを僕の都合で振り回しちゃいけませんよね。
僕とは違って、人間は限りある生を生きているのだから。


「そろそろ覚悟を決めなくちゃなぁ」


そうぽつりと呟いた横顔に、新羅とセルティは同時に首を傾げた。
すると帝人はそんな彼らににっこりと笑って、「ちょっと池袋留守にしますね」と告げる。
何処かに行くのか?戻ってくるのか?静雄はどうするんだ?と矢次早に質問するセルティに、帝人は「戻ってきますよ」とだけ言って、新羅宅を出た。
それから2週間後。
新羅は静雄の強襲を受けた。










「って言ってたんだけど、静雄知らなかったのかい?」
「・・・・・・・・・・・知らねぇ」
向かい側のソファで盛大に落ち込んだ友人に、新羅は笑いたいやら同情したいやら内心葛藤した。
静雄が新羅宅に玄関を吹っ飛ばす勢いで・・・いや、実際吹っ飛ばされたけども、駆けこんできたのは数十分前。
のんびりアフタヌーンティーを楽しんでいた新羅の首元をがっつり掴み、上下左右に揺さぶりながら開口一番、「帝人は?!!」である。
とりあえず恋人の憩いの場を破壊されてなるものかと、新羅はとりあえず自分が知る情報をぱにっくになっている友人に伝えた。
口調も真似してみたが、気持ち悪ィ!と抗議と拳が降ってきたのですぐに止めた。
ともあれ、新羅の『私が知る静雄が知りたい帝人君情報』を語り終えた今現在、目の前に落ち込む喧嘩人形の図ができあがったというわけだ。
(この姿写メ撮ってどっかに掲載したら、ある意味都市伝説になるかなぁ)
しかし一度キレたら暫くは聞く耳すらもたないくせに、帝人という単語に反応して正気に戻るとは、全くべた惚れとはこのことだと自分のことを棚に上げて思いながら、新羅は新たに淹れなおした紅茶を口に付ける。
「ていうかさ、僕がこの話を帝人君としたのは2週間前ぐらいだよ?今頃気付いたのって遅くない?」
「仕事が立て込んでよ・・・・しかも終わると思ったら、最後の一人が東北までとんずらこきやがって、くそっあいつまじ殺せばよかった・・!」
新羅は友人の殺人願望をさらりとスルーした。
「へぇ・・・で、帰ってきた時には帝人君の姿が無かったと。でもよく池袋に居ないって気付いたねぇ」
「匂いが」
「は?」
「匂いが薄くなってた。帝人の部屋、全然帰ってきてねぇみたいに気配も無かった」
帝人君が聞いたら「僕って臭いの?!」って嘆きそうだとか、吸血鬼の匂いとか気配とかどんなんだとか色々と突っ込みたかったが、とりあえず新羅は自分に正直になってみた。
「静雄、やっぱり一度解剖させてよ」
「ぶっ殺すぞ」
すげなく却下された。




戻ってくるって言ってたし、帝人君見た目はあんなだけど吸血鬼だし静雄並に強いから大丈夫じゃない?君が心配するほどでもないと思うけどねー。あ、でもやっぱり僕もセルティだったら心配で心配で夜も眠れないし食事も喉に通らな以下略。
静雄は八つ当たりもちょっぴり含んだ、友情加減したチョップを新羅にお見舞いし、とりあえず友人宅を出た。
帝人が居ないとわかったのなら居座ってもしょうがない。
しかし、池袋にすら居ないのは静雄の不安を無駄に煽る。
戻ってくると言った。
しかし、それが何時になるかは帝人は言わなかった。
長く時を重ねる吸血鬼と人間では時間の概念が違うと言っていたのは帝人だ。
もし、またあの長い時間を待つ羽目になったら。
静雄は腹の中がざあっと冷えるのを感じた。
(いやだ)
せっかく見つけたのに。
せっかく、会えたのに。
(嫌いになって忘れてくれるかもしれませんね)
込み上げる怒りでぎしりと歯を食いしばった。
馬鹿野郎。
静雄は愛する吸血鬼を罵倒する。
今度こそ忘れられるかと言われれば、答えは否だ。
積りに積もった想いは再会で爆発して、さらに範囲を広げ静雄の中で蓄積している。
それに諦められるのなら、とうの昔に諦めている。
帝人と別れた幼い時に。
それができなかったから、今の静雄があるのに。
今更、忘れるなんて。
「できっかよ!」
やり場の無い焦燥の矛先は良い位置にあった電柱へと向けられた。
そこら一帯が一晩停電になったのは言うまでもない。






静雄が地味(?)に池袋を破壊している時、帝人はとある土地へと来ていた。
木々が生い茂った獣しか存在しない場所。
しかし帝人はそこがかつて集落であったことを知っている。
自分が立つ場所に大きな屋敷があったことを知っている。
そこに生まれ、そして生き、死んでいった人間を、帝人は知っていた。
「ここに来るのはもう何十年ぶりでしょうか。そういえば、貴方が人の生を全うしてからは足を踏み入れたことはありませんでしたね」
語りかけるのはかつて帝人を傍らにと望んだ人間へ。
もう、この世界のどこにも居ない、ひとへ。
「あの頃は貴方以上のモノ好きとはもう二度と会えないなぁって思ってましたけど、世界は広いです。今、私の近くに貴方のような・・・いえ貴方以上のモノ好きがいるんですよ」
約束を果たせと、昔の面影を探すのが一苦労なほど成長した子はそう言った。
(いっしょにいきたい)
作品名:僕のmonster Ⅱ 作家名:いの