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もしケンシロウが真性包茎だったら

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 ラオウもケンシロウも互いに深刻な思い違いをしていた。自分は相手の事を嫌いだと思ってた。それはある側面で事実である。しかし、それは相手が自分に対して都礼ないから嫌いなのであって、なぜそれで自分が相手の事を嫌いになるのか、それをもっと深く考えれば事実に気づけるはずだが、あいにくラオウにもケンシロウにも内省という言葉はなかった。
 ケンシロウが死にそうな顔で喘いでいるのが楽しい。多分石鹸が傷に染みて痛いのだろうが、それならもっと塗りつけてやるまで。
 その後6回ぐらい達せられて、ようやく兄が手を放したのでケンシロウはそのままその場に膝をついて座りこんだ。
いつもいつもなんと酷い兄なのだろう。確かに、血が繋がってないからトキの様に可愛く思えはしないだろうが、トキ並みにとは言わないが、もう少し愛情をかけてくれてもいいのではないだろうか。ラオウを見上げるとひどく満足げな顔をしていた。人をこんなに苦しませておいて何が楽しいのだ。全くこの男は本当にカサンドラ伝説だ。ケンシロウはラオウにも同じ気分を味わわせたくなった。兄弟の手で達せられる恥辱というものを教えてやろうと思った。このクソ長兄が。
 そこでケンシロウは目の前で退屈そうにぶらぶらしている陽物を思いっきり掴んだ。
 どうせ仕返しをするならば、金的をした方が遙かによかったのではないか、後で思い返すとそうなのだが、この時のケンシロウにはあいにくそういう考えが思い浮かばなかった。ケンシロウはラオウと同程度に愚かである。
ラオウはケンシロウがいきなり陽物に掴みかかってきても特に驚かなかった。ああ、また訳のわからない事を始めたな、と思った。
 強く握ってみたが相手が特に何の反応も返さないので、モヒカンの頭を握りつぶすぐらいの力で握りこんでみると、ようやく何がしかの反応が返ってきた。そこで右手を結んだり開いたりして、左手は掌で先端を思いっきり擦ってやる。自分は浮りを触られただけで達したのに、なぜ達しないのか、理不尽である。これが包茎とズル剥けの違いかとケンシロウは非常に悔しい思いをさせられた。
 それでももっと頑張っていると大分達しそうな感じになっていったので、もう少しだと頑張る。そして。
 「うわっ、わぷっ、ゲホッ」
 避ける、という事が頭になかったのでもろに大量の液体を頭から被ってしまった。ケンシロウは、子供の頃に田圃で滑って転んで泥を頭から被った事を思い出した。大体あんな感じだろう。ただ、今は粘度は高いし独特の臭気はするはで今の状況の方が悪いと言える。大体何故一回の射精でこんな大量の液体が出るのだ。人体の構造的におかしいのではないだろうか。もしかするとラオウは人間ではなくてエロゲ星から来たエロゲ星人なのではないだろうか。
 ほとんど目も開けていられないような状態で、手探りでシャワーヘッドを探す。ラオウは何をしているのだろう。多分ただ突っ立っているだけなのだろう。そう思っていると、ラオウがしゃがんだ気配がして、「ケンシロウ」と声を掛けられた。べちゃ、という音がしたから液体の海ができているタイルの床に膝をついたのだろう。「拳王は決して膝など地に着かぬ!」と言っているラオウが膝を着くなど、と思っていると顔の両脇に手を掛けられたのがわかった。何、と思う間もなく口づけされたのが分かった。
 「ん」
 いきなり舌を入れられて息苦しい。口の中をべろべろ舐めまわされて、変な気分になる。そのまま1分ぐらいそうされていた。ようやく解放されて息をつく。
 「早く目を開けぬか」
 「…目に入る」
 ケンシロウがそう返すと、いきなり右の目元をべろっとなめられた。その後左の目元もべろっとなめられた。しかし液を舌で拭われたと言ってもそれはそれで唾液でべたついているので、目を開けにくい。目を開けないでいるとまた口づけされて、されるがままにしていると、そのまま犯されそうになったので、それは岩山両斬破で阻止した。
 「岩山両斬破ァ!」
 「ぐはあ!」
 多分ラオウの事なので、この程度で真っ二つになってはいないだろう。実際生きているらしい事はラオウが呻いていることからわかったので、その間に手探りで盥と手桶を取って、盥に湯船からお湯を汲んで、顔をとりあえず洗った。なんとか目を開けられるようになった。
 「ケンシロウ…貴様…ここはどう考えても激流に身を任せ同化すべき状況であろうが!」
 …なぜ俺が怒られなければならないのか。それが問題である。
 ケンシロウは極めて不機嫌に答えた。
 「…陽物のみならず、尻まで血塗れにされるのは御免だ」
 「血塗れになるとは限らんぞ」
 「いや、なる」
 「訓練すれば西瓜だって入るらしいではないか」
 「俺は訓練されてるわけじゃない」
 「よかろう、痛みが性的快感に変わる秘孔を突いてやるわ!大人しくこの世紀末覇者に従うがよい」
 「世紀末救世主の名にかけて、断る。…それに、我らに相応しい場所というものがあるだろう」
 「…部屋ではできぬ」
 「何故だ」
 「こんな事で寝台を粗大ゴミに出したくはないわ」
 確かに現在ラオウの出した液で風呂場の床に海ができているような状況では、寝台が速効粗大ゴミになることは間違いなかった。
 「…全部俺の中に出せばいいだろう」
 そんな事をすればケンシロウが腹を下すことは間違いなしである。
 そこでラオウは「俺にはそんな下世話な趣味はない」と反論したが、ケンシロウは「いや、俺は構わん」と返答した。「まあ確かにできれば腹は下したくないが…その方が手間が省ける」「できぬ」「構わん」「できぬ」
 「…そもそも、この家でしたくはない」
 「何?」
 なんとなくケンシロウの言うこともわからないではなかった。家族として過ごした空間でそういうことはしたくないという事なのだろうが、
 「俺は構わぬ」
 「あんたの意見は聞いていない」
 ラオウにはケンシロウを力づくで従わせる選択肢もあったが、それを今しようとすれば風呂場を破壊してしまう事は確実だったので、珍しくラオウにしては譲歩した。別に風呂場を破壊すること自体はラオウには全く躊躇はないが、誰か来たら面倒だ。
 その誰かと戦っている間にケンシロウが逃走したら面倒だ。
 それならケンシロウを殺せばいい。
 いや、ケンシロウを殺す前に一度ぐらいは契りを交わしておきたい。
 ならばここで殺す事はできん。
 「ならば今すぐ連れ込み宿へ行くのみ!」
 「…そういう問題ではない」
 「いい加減にせぬか!」
 「後でトキやジャギと顔を合わせたくない」
 「ぬう?」
 「…合わせたくない」
 「……」
 確かに、その事に関してラオウも言われてみれば多少の罪悪感が湧かないでも無かった。
 ならばここで手詰まりである。
 それならもうケンシロウと会話をしたってしょうがない(むしろこれ以上の会話は気分がよくない)のでラオウはケンシロウを放置してさっさと風呂場から出ようとした。ケンシロウは微かに呟いた。
 「…この家を出て、二人きりでどこかで暮らすと言うのならば、いい」
 「……」
 ラオウは気が変わったのでケンシロウを手伝ってやった。