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夢みる子供の物語

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記念すべき誕生日のパーティには、各国から友人たちが集まってくれる。とびきり楽しく派手に盛大に祝いたいから、絶対予定を空けて遊びに来てくれよって前々からよく念を押しておくんだ。招待状は毎年時間をかけて封筒から自分で選ぶ。部屋の飾りつけもテーブルに並べるご馳走も、正直着られたらなんだっていいと思ってる堅苦しいスーツだってこの日だけは念入りに選ぶ。皺ひとつないシャツに下ろしたての革靴を履いて、爪の中までぴかぴかにした手で皆に握手を求めにいく。それから、彼らが思い思いに持ってきてくれたプレゼントをありがたく受け取る。

今年もそんなふうにいい具合の満腹感とほろ酔い気分に包まれた明るく広いフロアを一周した俺は、自分が始めについていたテーブルの中央、キャンドル立てと銀色のバターケースのあいだに、リボンの掛かったまだ開けられていない小箱を見つけた。乾杯をしたときには見なかった包みだった。一体誰がくれたものなんだか、周りで飲み食いしている連中に片端から声を掛けても、皆自分が持ってきたものではないと口をそろえる。そんならまぁ開けてみればいいや、と俺は最後の贈り物の包みに手をかけた。
はたして箱の中から出てきたのは、手のひらに収まるサイズの卵形をした小型ゲーム機のような物だった。いくつかのボタンと小さな液晶がついている、十ドルもするかどうか疑問が残るちゃちな紙のパッケージには「Solitude Level meter」と、書かれていた。孤独測定器、だって? なんだこりゃあ、と思った。パーティグッズにしたってなんだか辛気くさいし、だいいち怪しいったらない。

俺は、酔っ払ったイタリアに後ろから抱きつかれて壁際でふらふらしている日本のところに、そのなんちゃらメーターとやらを持っていってみた。なんとなく、彼ならばこういう物を持ってきそうな気がしたからだ。彼の家の国民は、色々なことをすぐ数値化したがる。脳年齢から恋愛偏差値まで幅広く。最近では声のトーンから感情を読み取る音声感情測定器、なんてのも、ゲームソフト化されているらしい。だったらこんなヘンテコなおもちゃを持っていても、不思議じゃないかもしれない。

「ねえ、これって君が持ってきた物じゃないの?」
そう言って奇妙な測定器なる物を差し出すと、日本はおんぶおばけみたいなイタリアを背負ったままゆっくり首をかしげた。
作品名:夢みる子供の物語 作家名:haru