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はじまり

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記憶にあるのは、瞳の奥にちらつく炎だけだった。
自分を組み敷いて、月光さえも背にした彼の表情は暗くて伺えなかった。
けれどもその中、自分に降り注ぐ視線は怖ろしいほどに鮮明だった。

「こわいか?」

まるで俺の心を見透かすように彼は言う。

「んな感情、お前には必要ねぇよ」

――そうだ。
――そうだった。

俺には、必要がない。

感情なんて、一欠片だって要らない。
そういう生き方を、自分はしてきたのだ。

「いいぜ、その目」

無性に壊したくなる、と彼は不敵な笑みを浮かべながら言った。



手足は、何の感覚もなかった。
いたい、とか。
つめたい、とか。
そんな負の感覚さえも感じない。
ぴくりとも動かせない、それは意志など無いに等しかった。



ただ、衣服のなかに入り込んできた手が自分の肌の上を滑る。
脇腹をなで、腰まわりを撫でまわす手つきに温もりなどある筈もなく。

「――…ッ」

身じろげば、その反応を楽しむかのように、彼の瞳に光が宿った。

「…細ぇな」

嘲りとも、見下しとも受け取れる口調。
しかしそれに向っていく術は、もはや残されていなかった。
動かない身体は、自らを消すという行為すらさせてくれやしない。

「惨めだな…零」

彼の瞳がぐっと近づいてきた。
片方の手が、自身の顔に近づけられた瞬間、
背筋をおぞましいほどの震えが駆け抜けて
思わず顔をそむけてしまった。
その行動を取った瞬間に、しまった…と後悔しても遅かった。

「――ッ!」

強引に顎を掴まれて正面を向かされる。
茶化したような色は忽然と失われていた。
彼の瞳には切り裂くような鋭さ以外残っていない。
悪魔のような、残虐さを露わにさせていた。


「嫌だと言っても、止めてなんかやらないぜ?
…お前が泣いて懇願したって、隅々まで調べ上げて」


壊して、やる。


その瞳には、憎しみしか映っていないように見えた。






彼の名前はヘルキャット。




俺を破壊するためだけに生まれた、兵器。




「地獄を、見せてやるよ」



そういいながらも彼の顔はさらに距離を縮めてきて。
布越しに唇が重ねられる。



それは矛盾を孕んだ関係の、はじまりだった。




作品名:はじまり 作家名:夏唯一