死してもなお・・・
薄暗いドブがたまるトンネルで、背を汚らしい壁に預けて座り込む。
『馬鹿ですね』
「はは・・・ひどっ・・・」
『馬鹿を馬鹿と言って何が悪いんです。僕の忠告を聞きやしない』
「俺がそんな聞く人間にみえ・・・る?」
『いいえ、見えません』
「だよねぇ・・・」
横っ腹を押さえている手が段々と血で染まっていく。腹は温かいのに、後は冷えていくこの感覚マジ最悪。
『最悪ならこんな状況になる前にどうにかしたらよかっただじゃないですか』
しかも帝人くんの幻聴まで聞こえてくるんだ。
今、目の前にとっても辛そうな顔の帝人くんが立っている。まったく本当に嫌になるな。
だけど、そんな幻影に俺は返事をする。だってこんなときじゃないと帝人くんと話せないから。
もう、この世に存在している帝人くんには会えないから。
「そんな、顔・・・しないでよ」
『させているのは貴方でしょう』
「そうなんだよね・・・」
このやり取りが久しぶりすぎて、嬉しすぎて涙出るとかさ。いったいどんだけ俺病んでるんだろう。
あぁ、帝人くんの声だ。
「ねぇみかどくん・・・もっともっとさ話してよ。声、聞かせて」
『臨也さん、お願いです。逃げて下さい』
「無理だよ。俺この傷だよ・・・逃げられるわけない」
苦笑してみせた。だって腹にどでか穴空けられて足にも数発食らってる。出血量だってはんぱない。
こんな状態でどうやってあんな大多数の人間から逃げおおせと言うのか。
全く、本当にこの少年は無茶を言う。
『・・・だめですよ、あきらめないで下さい』
「あきらめるなって・・・」
『僕が殺されたからってこんな馬鹿なこと・・・』
「はっ、何?俺がそんなことするわけないじゃん・・・」
そうだ。そんなことあるわけない。
この俺が、この少年が巻き込まれた事故が本当はこの組の薄汚い内部抗争に巻き込まれたもので、
その仇討ちに来たなんて、なんて勝手な被害妄想なのだろう。
本当に、ありえない。
『臨也さん・・・』
「言いかい帝人くん・・・俺はそんなお人好しな人間じゃないんだ」
『知ってます。臨也さんは汚くて非道で非常でそしてとっても僕には甘かった』
帝人くんの顔が今にも泣きそうに歪み、けれど一生懸命笑おうとしていた。
「っ、」
『臨也さん・・・お願いです。どうか、どうか生きて・・・』
痛かっただろう。苦しかっただろう。
車にはねられたとき、君はいったい何を思ったんだろうね。
本当に、苦しくて痛くてきっと無念だったんだろう。俺はそれを想像することしかできない。
だから、そんな顔をする帝人くんなんて、これは俺の感情が作り出しているただの偽物にすぎないのに。
俺って本当に単純だな。
「帝人くっ」
手を伸ばす。帝人くんは笑うとふっと、腕を上げ俺から見て左を指さした。
俺はうなずくと、壁に手をつけて立ち上がる。帝人くんの幻影はもうどこにもいなかった。
重たい足で、ふらつく体で長い長いトンネルを歩く。
不思議に誰とも会わなかった。あんなに必死に追っていたくせに。
ようやく出口にさしかかるとスポットライトが俺を照らす。
一瞬身がすくんだが、耳に響く馬のいななきに肩の力を抜いた。
「黒バイク・・・」
俺は異形の姿を確認したとたん、不覚にもその場で意識を失った。
『馬鹿ですね』
「はは・・・ひどっ・・・」
『馬鹿を馬鹿と言って何が悪いんです。僕の忠告を聞きやしない』
「俺がそんな聞く人間にみえ・・・る?」
『いいえ、見えません』
「だよねぇ・・・」
横っ腹を押さえている手が段々と血で染まっていく。腹は温かいのに、後は冷えていくこの感覚マジ最悪。
『最悪ならこんな状況になる前にどうにかしたらよかっただじゃないですか』
しかも帝人くんの幻聴まで聞こえてくるんだ。
今、目の前にとっても辛そうな顔の帝人くんが立っている。まったく本当に嫌になるな。
だけど、そんな幻影に俺は返事をする。だってこんなときじゃないと帝人くんと話せないから。
もう、この世に存在している帝人くんには会えないから。
「そんな、顔・・・しないでよ」
『させているのは貴方でしょう』
「そうなんだよね・・・」
このやり取りが久しぶりすぎて、嬉しすぎて涙出るとかさ。いったいどんだけ俺病んでるんだろう。
あぁ、帝人くんの声だ。
「ねぇみかどくん・・・もっともっとさ話してよ。声、聞かせて」
『臨也さん、お願いです。逃げて下さい』
「無理だよ。俺この傷だよ・・・逃げられるわけない」
苦笑してみせた。だって腹にどでか穴空けられて足にも数発食らってる。出血量だってはんぱない。
こんな状態でどうやってあんな大多数の人間から逃げおおせと言うのか。
全く、本当にこの少年は無茶を言う。
『・・・だめですよ、あきらめないで下さい』
「あきらめるなって・・・」
『僕が殺されたからってこんな馬鹿なこと・・・』
「はっ、何?俺がそんなことするわけないじゃん・・・」
そうだ。そんなことあるわけない。
この俺が、この少年が巻き込まれた事故が本当はこの組の薄汚い内部抗争に巻き込まれたもので、
その仇討ちに来たなんて、なんて勝手な被害妄想なのだろう。
本当に、ありえない。
『臨也さん・・・』
「言いかい帝人くん・・・俺はそんなお人好しな人間じゃないんだ」
『知ってます。臨也さんは汚くて非道で非常でそしてとっても僕には甘かった』
帝人くんの顔が今にも泣きそうに歪み、けれど一生懸命笑おうとしていた。
「っ、」
『臨也さん・・・お願いです。どうか、どうか生きて・・・』
痛かっただろう。苦しかっただろう。
車にはねられたとき、君はいったい何を思ったんだろうね。
本当に、苦しくて痛くてきっと無念だったんだろう。俺はそれを想像することしかできない。
だから、そんな顔をする帝人くんなんて、これは俺の感情が作り出しているただの偽物にすぎないのに。
俺って本当に単純だな。
「帝人くっ」
手を伸ばす。帝人くんは笑うとふっと、腕を上げ俺から見て左を指さした。
俺はうなずくと、壁に手をつけて立ち上がる。帝人くんの幻影はもうどこにもいなかった。
重たい足で、ふらつく体で長い長いトンネルを歩く。
不思議に誰とも会わなかった。あんなに必死に追っていたくせに。
ようやく出口にさしかかるとスポットライトが俺を照らす。
一瞬身がすくんだが、耳に響く馬のいななきに肩の力を抜いた。
「黒バイク・・・」
俺は異形の姿を確認したとたん、不覚にもその場で意識を失った。