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毛布の子

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 圧迫を感じるのか、バーンが腕を掴み取る。そのままベッドに縫い付けて勝ち誇ったような笑みを向けた。猫科の何かがそうするようににやりと。かと思えばすぐに表情が反転するので、見ていて飽きがこない。釣りあがった眉を寄せてじっと睨むのだ。バーンは秋の空みたいにころころと態度が変わる。
「おまえのせいで朝食食べ損ねたじゃねーか」
「私に責任はない」
「起こしてくれりゃあいい、簡単なことだろ」
「断る。暇じゃないんだ」
 バーンが少し怒ったように半眼の視線を送る。ガゼルはそれを受け流して、ぼうっと天井を眺めた。白い。平坦としていてまっさらで、何より無表情だ。じっと見つめていると、痺れを切らしたバーンが邪魔をしてくる。ガゼルの視界に突然現れたかと思うと、動物みたいに胸元へ頭を寄せる。燃えるような頭髪がはだかの胸をくすぐって、意識がそちらへ誘われた。
「バーン」
「……んだよ」
 近い。すぐそばでバーンの匂いがする。日光をたくさん浴びたシーツの香りと、それから少し汗の匂い。バーンの高めな体温も相まって、まるでシーツに包まっているみたいだ。
「熱い。暑苦しい。どいてくれ」
「てめーはいっつもそうやって……」
 口をへの字に曲げつつ、だるそうなガゼルから身を引く。離れる体温。触れ合っていた部分が空気に触れてひやりとした。
「きみはいつもくっついてくるな」
「落着くんだよ。認めたくねーが、本当のことなんだからしかたがねえ」
 俺はもう寝る、と練習による疲労で重たそうな瞼を擦りながらバーンが言う。そう時間も経たない内に規則正しい寝息が聞こえてきて、寝入ったことを知る。
 バーンは寝付きがいい。気づいたときにはもう眠っていて、その分眠りも深い。対するガゼルがまた真逆で、なかなか眠りに就くまでが遠く、些細なことで目が覚めてしまう。こんな風に隣で他人が眠っていれば尚のことだ。
(眠れない……)
 からだが資本であるのに、睡眠不足で体調を崩しでもしたらお笑い種だ。いっそ追い出してしまえばもっと早く安眠を得られるのだろうか。一人で眠るときとバーンが気まぐれを起こしてやってくるときと、どちらの方がゆっくりと休めるのだろう。
 真横で眠るバーンの寝返りで起こされるときもあれば、空間の空いたスペースに焦燥を感じてうまく眠れないときもある。バーンの体温に安らぎを得るときもあれば、狭苦しい思いをすることもないひとりだけの寝台に感謝することもある。
 無意識に毛先をいじっていた。指でもてあそぶようにくるくると。すぐ近くにあるバーンのそれは彼の性格を表すように鮮やかな赤色をしていて、触るとガゼルのものよりも少し硬い。
 眠っているのをいいことに、指先で赤毛を遊ばせる。不思議と眠れぬゆえの焦燥は掻き消えていた。
作品名:毛布の子 作家名:ニコバン